2022年9月25日(日)

#財政危機と闘います

2022年7月1日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 さらに、企業規模別にみると、法人数で全体の0.6%に過ぎない資本金1億円以上の法人(1.7万社)が日本の法人税総額11.7兆円のうちの5.8兆円、52%を負担している。中でも809社しかない資本金100億円以上の法人が法人税の25%を負担する構図となっており、法人税負担が一部の企業に集中している。

 つまり、政府が目指す「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」成長志向型の法人税改革が未完であることがわかる。

法人税増税では日本経済が持たない

 こうした一部の大企業に法人税が集中する現状を放置したまま、選挙向けのバラマキの財源として法人税増税を行えばどういうことが起きるだろうか。

 法人税増税により負担が集中することになる企業は、世界の国・地域の中から立地を選択すればいいので、重い負担に嫌気がさし日本を脱出するだろう。先進国には日本よりも法人税率が低い国がまだまだ多いのだ。日本に残る選択をした企業は、国際競争力が低下し、従前の利益も雇用も維持できなくなる。

 また、それまでは正直に法人税を負担していた企業も、租税特別措置を駆使するなどして、税負担逃れを始めるだろう。そもそも社会保障の企業負担は1990年21兆円から2019年35兆円と14兆円も増加している。増加した金額だけでも22年度の法人税収を上回る大きさだ。

 このように、法人税率の引き上げは、ただでさえ過重な社会保障の企業負担と相まって、企業の国際競争力を削ぎ、産業の空洞化を促進するため、日本経済の低迷にしか繋がらない。

 日本経済の没落を望むのであれば話は別だが、歳出拡大と財政健全化を両睨みで進め、なおかつ日本経済への悪影響を最小限にとどめたいのであれば、法人税率の引き上げによって法人税収の増を図るのではなく、課税ベースを浸食し、税収減につながる租税特別措置の整理を通じて、全企業の6割以上が法人税を負担していない日本の異常事態を是正し、課税ベースを拡大することこそが最適である。

  
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