経済対策による財政負担の増加
新型コロナウイルスが本格的に流行した20年度、政府は、国民の命や暮らしを守り、未曾有の危機に対応するため、3度の補正予算(第1次補正予算25兆6914億円、第2次補正予算31兆9114億円、第3次補正予算19兆1761億円)が組まれた。こうした3度の補正予算での追加歳出総額は77兆円であり、国民一人当たりに換算すると61万円となる。
特に、家計や非金融法人企業(一般企業)での受け取りが大きく、家計では特別定額給付金等、一般企業では持続化給付金や雇用調整助成金等によるところが大きい。さらに、業種別にみると、外食産業や宿泊業を支援するために実施されたGo To キャンペーンや時短協力金により、ホテル、レストラン、観光関係等の受け取りが前年度に比べて増加した。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、病院等への受診を手控える動きがあったと報道されたこともあるように、保健産業でが、「外来サービス」、「病院サービス」は減少したものの、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金により「その他」が大きく増加し、トータルで見れば3.5兆円前年度より受け取りが増加した。
こうして、財政負担は激増し、それは国債によって賄われているため、「60年償還ルール」と相まってその大部分はわたしたちの子供や孫たちの負担として引き継がれることになる。
さらに、コロナ禍で多くの中小零細企業が経営難に陥るなか、いわゆるゼロゼロ融資(新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組み)が大規模に執行された。本来増えるはずの企業倒産が抑制され続けてきた結果、今後「ゾンビ企業」の増加が懸念されている。帝国データバンクの調査によれば、国際決済銀行(BIS)の基準における「ゾンビ企業」率は20年度で約11.3%、「ゾンビ企業」数は約16.5万社と推計されている。
日本経済新聞の報道によれば、「コロナ予備費」のうち、国会に使途を報告した12兆円余りの9割以上に相当する11兆円が具体的にどう使われたか把握できないとのことだ(「コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題」)。
緊急時であることを隠れ蓑にして、財政資金の無駄遣いがなされていることも忘れてはいけない。