企画開発を担当する住友生命Vitality戦略部の北村英之さんと前田純一さんに、ナッジと保険の親和性や従来商品との違いなどについてうかがいました。
佐々木先生:住友生命「Vitality」はどのような保険サービスなんでしょうか。
前田さん:従来の生命保険(医療、死亡保障など)とVitality健康プログラムを組み合わせてご提供するサービスです。本サービスでは、健康増進の取り組みに応じて獲得した累計ポイントでステータスが決まり、「保険料の割引」やさまざまな「特典(リワード)」を利用できます。これにより、人生100年時代を迎える中、できるだけ長く健康でいられるように加入者をサポートします。
行動経済学について解説する
住友生命「Vitality」のテレビCM
佐々木先生:もとは海外で生まれたサービスだと聞きました。
北村さん:はい、南アフリカ共和国のディスカバリーという会社で開発され、各国にローカライズされながら広がり、今では世界36カ国で約2710万人以上の加入者数がいます。日本では住友生命「Vitality」として、2018年7月に発売を開始し、21年度末には累計の販売件数が100万件を突破しました。
佐々木先生:どのように行動経済学の知見が活用されているんでしょうか?
前田さん:Vitalityにご加入いただきますと、スタート時から、保険料を15%割り引きします。健康増進活動にしっかり取り組んでいただくと、さらに保険料を下げることができる一方、ほとんど取り組まないでいると、保険料がだんだん上がっていく仕組みになっていて、「保険料の上昇は避けたい」という気持ちが、健康増進活動の継続につながります。
スタート時に保険料が15%割り引きされ、
健康増進活動の取り組み次第で上下する
佐々木先生:損失を極端に嫌う「損失回避」の特性を踏まえた仕組みですね。
海外の研究の「目標を達成したらボーナスを与える仕組み」よりも、「最初にボーナスを与えて目標が達成されなかったら没収される仕組み」の方がパフォーマンスが高かったという結果にも通じるところがあります。
他に「この工夫が加入者の心に響いているんじゃないか」と感じられるものはありますか?