2022年10月6日(木)

社会の「困った」に寄り添う行動経済学

2022年8月28日

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佐々木周作 (ささき・しゅうさく)

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授。博士(経済学、大阪大学)。専門は行動経済学・実験経済学。三菱東京UFJ銀行・京都大学特定講師、東北学院大学経済学部准教授を経て現職。一般向け書籍に『今日から使える行動経済学』(ナツメ社)等がある。

[著書]
 あなたは「行動経済学に基づいた新しい保険」のテレビCMを見たことはありますか? 住友生命「Vitality(バイタリティ)」という保険商品のもので、お笑い芸人バナナマンのお二人が出演されていますよね。CMでは、なかなか健康的な習慣を根付かせられない人間らしい特性とともに、人々の行動をそっと後押しするナッジについて分かりやすく紹介されています。
 企画開発を担当する住友生命Vitality戦略部の北村英之さんと前田純一さんに、ナッジと保険の親和性や従来商品との違いなどについてうかがいました。
イラストレーション=石野点子 Tenko Ishino

佐々木先生:住友生命「Vitality」はどのような保険サービスなんでしょうか。

前田さん:従来の生命保険(医療、死亡保障など)とVitality健康プログラムを組み合わせてご提供するサービスです。本サービスでは、健康増進の取り組みに応じて獲得した累計ポイントでステータスが決まり、「保険料の割引」やさまざまな「特典(リワード)」を利用できます。これにより、人生100年時代を迎える中、できるだけ長く健康でいられるように加入者をサポートします。

行動経済学について解説する
住友生命「Vitality」のテレビCM

(出所)住友生命

佐々木先生:もとは海外で生まれたサービスだと聞きました。

北村さん:はい、南アフリカ共和国のディスカバリーという会社で開発され、各国にローカライズされながら広がり、今では世界36カ国で約2710万人以上の加入者数がいます。日本では住友生命「Vitality」として、2018年7月に発売を開始し、21年度末には累計の販売件数が100万件を突破しました。

佐々木先生:どのように行動経済学の知見が活用されているんでしょうか?

前田さん:Vitalityにご加入いただきますと、スタート時から、保険料を15%割り引きします。健康増進活動にしっかり取り組んでいただくと、さらに保険料を下げることができる一方、ほとんど取り組まないでいると、保険料がだんだん上がっていく仕組みになっていて、「保険料の上昇は避けたい」という気持ちが、健康増進活動の継続につながります。

スタート時に保険料が15%割り引きされ、
健康増進活動の取り組み次第で上下する

(出所)住友生命

佐々木先生:損失を極端に嫌う「損失回避」の特性を踏まえた仕組みですね。

 海外の研究の「目標を達成したらボーナスを与える仕組み」よりも、「最初にボーナスを与えて目標が達成されなかったら没収される仕組み」の方がパフォーマンスが高かったという結果にも通じるところがあります。

 他に「この工夫が加入者の心に響いているんじゃないか」と感じられるものはありますか?

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