2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2022年8月30日

 スケートボードと自転車競技会場だった有明アーバンスポーツパークはある意味、予想していなかった施設といえるだろう。東京大会の新種目スケートボード競技における日本人選手のメダルラッシュが〝聖地〟としての価値を高めた。もともとは仮設的な運用を想定していたところ、恒久施設として計画を変更することになっている。

 計画変更は前向きなものとも言えるが、施設設計に従事してきた筆者からすると、「大丈夫かしら……」と多少の不安は残る。大会映像をみてもわかるように、広い床面・複雑なパーク形状はモルタルやコンクリートで作るとすぐに表面に収縮クラック(ひび)が入る。

 それ自体に構造的な問題はないが、クラックから入る雨水が悪さをする。特にベイエリアの潮風を含む雨水はコンクリートの中性化を進め劣化を早めてしまう恐れも大きい。綿密な維持管理計画をつくらなければ、表面はすぐにざらざらとし始め、せっかくの聖地が台無しになるだろう。

 こうしたベイエリアのスポーツ施設の集約化は一見するとわかりやすいが、各施設がどのようにつながっていくのかまだ見えていない。スポーツと文化の両面で活用できる民間主導の有明アリーナ、大会誘致と都民利用に揺れる有明テニスの森、スケートボードの聖地として維持管理と価値を高める有明アーバンスポーツパークと、個々の施設では魅力を創出できているものの、スポーツクラスタ全体を対象とした展開は未知数だ。

 さらに、スポーツ庁が示す「Sports in Life」のような生活によりそうスポーツを目指すうえで、その場までの移動も含めた利用しにくさが気になる。ゆりかもめの増便は難しいことを考えると、別の公共交通機関や自転車ルートなどの交通インフラ整備が必須だろう。

 ベイエリアについては、大会を見越して多くのデベロッパーが高層住宅を開発しているが、ここに住まう都民らの生活に寄り添うスポーツ施設を整備したということだろうか。1935年には近代建築の巨匠ル・コルビジェがスポーツとともにある高層住宅を発表しているが、約100年経った今でも何ら変わっていない初期近代的なまちづくりを繰り返そうとしているようにも思える。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)といった最新の潮流も含めた新たな都市計画やまちづくりの視点が待望される。

潜在的な魅力を生かしたい武蔵野の森エリア

 つづいて武蔵野の森エリアである。もともと東京1964大会のマラソン競技として開発され、甲州街道の折り返し地点に近い味の素スタジアムを中心とした東京郊外最大のスポーツクラスタである。

 味の素スタジアムは都施設の中でも最大級の陸上競技場で、インフィールドの球技利用を含めた多目的スタジアムとして使用されている。2013年の東京国体にあわせて第1種公認陸上競技場と国際規格となる国際陸上競技連盟(IAAF)クラス2を取得。都内でも最高クラスの陸上競技場であるにも関わらず、大きな大会誘致が行われていない。

 報道されている内容を整理する限り、新国立競技場の陸上競技利用と天秤にかけられているようにみえる。新国立競技場を陸上競技場とするのであれば味の素スタジアムは球技専用スタジアムに、新国立競技場を球技専用とするのであれば東京スタジアムを陸上競技場に、といった具合だ。新国立競技場の効果的な活用方法が見えていない今、その行く末は迷走させられている。

 スタジアム周辺には補助競技場やスポーツコートを敷設したフットサルプラザなど、付帯施設が充実している。なにより、隣接する調布飛行場を取り囲むように25箇所分マウンドが確保された野球場グラウンドと11面分のサッカーグラウンドが取り囲むまさにアマチュアスポーツの聖地となるポテンシャルは極めて高い。味の素スタジアムそのものの施設の専門性も重要な議論ではあるが、周辺にある豊富なスポーツ資源との連携を踏まえてより面的なエリア連携が必要となるだろう。

 そのうえでも重要な施設となるのが武蔵野の森総合スポーツプラザだろう。バドミントンや近代五種、車いすバスケの会場となった施設は、五輪招致に先駆けてもっとも早期に建設された。


新着記事

»もっと見る