2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2022年8月30日

 メインアリーナやサブアリーナ、多目的スペースだけでなく、隣接の味の素スタジアムにもつながる大きなぺデストリアンデッキがバリアフリーの観点からのアクセシビリティのみならずエリア全体の連携を図るうえで重要なパスとなっている。エントランスを覆う大ひさしやホスピタリティを高めたデッキ席の常設、階層ごとに明快な動線分離など、これまでの公共スポーツ施設には見られなかった配慮もうれしい。

 一方で、五輪招致を踏まえた巨大な空間構成は都民利用を想定するうえではいささかオーバースペックであり、逆にイベント利用に特化するには公共スポーツ施設として作りこまれた施設仕様がエンタメ利用・競技スポーツどちらにも振り切れていない今一歩足りない惜しい施設のようにも思える。大会に併せて設計と普段利用のニーズは、どうしても歪みが生じる。アリーナに面する観客席は仮設席を取り除いたことで部分的に壁が高くなってしまい、利用しにくい2階観客席ができている(写真)。

(筆者提供)

勝負は今後5年の歩み

 都が「レガシー」とする2大拠点を改めて見ると、「拠点化」したことで生まれている課題が多いようにも思える。総合運動公園のようなスポーツクラスタの形成は競技スポーツの聖地をつくるうえで分かりやすさにも繋がるが、より多くの人が普段からスポーツに親しむまちづくりとは離れてしまう方向にある。有明と武蔵野の森も〝どっちつかず〟の存在になりつつある。

 今回のオリ・パラ1周年イベントのなかで個人的にも注目したのがパラ競技の多くのイベントである。大規模なものではないが都内外に広がるグラスルーツ(草の根)活動によるパラスポーツ振興は、まさに史上初の2回目のパラリンピックを行った東京2020レガシーとして根を下ろしたものだと考えている。

 コロナ禍の開催という異常事態での五輪となったこともあり、レガシープランは大会後に詳細を詰めた形を余儀なくされた。過去の事例で言えば、シドニー大会のように、中長期的な整備をふくめ、今後5年くらいを目途に完成していく流れではないかと思われる。可能性は無限とも言えるが、果たして今後、どのような歩みを見せるのだろうか。

 将来、今思えばきっかけは東京2020大会だったね、と振り返ったレガシーが良いことの振り返りなのか、悪いことの振り返りなのか、レガシーの構築はまだまだこれからなのである。

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