だが、自分の目は進行性の病気なので失明する危険性がある。もし視力を失った場合に何らかの資格を持っていなければ一人で生きていくことはできない。なによりも親にこれ以上の迷惑を掛けたくないという思いが強かった。
「一人でお金を稼いで自立した生活ができるようになりたいというのが一番の動機です。親は不安だとは思うんですが、長い目で見たときにこれが心配させない方法かなと思ったんです。安心してもらいたくて国立筑波技術大学に進むことを決めました」
進学するとすぐに柔道サークルに誘われた。人数が少なく遊びの延長で活動していたような集まりだったが、大学2年の「全国視覚障害者学生柔道選手権」の81kg・90kg合同の階級で優勝し、翌年の「全国視覚障害者柔道大会」の81kgで3位となった。しかし、ラグビー部時代のような達成感はなかった。
柔道と並行して、茨城の強豪ブラインドサッカーチーム「Avanzare」にも加入した。
「柔道もサッカーもどちらも好きですが、僕は戦略を立てて、どうやって攻めて行こうかと考えるチームスポーツが好きなので、サッカーがメインだと思っています」
―ブラインドサッカーはイマジネーションとオリエンテーションを駆使した5人制サッカーです。また、視覚障がい者と健常者が同じフィールドでプレーすることのできるユニバーサルスポーツでもあります。B1クラスとB2/3クラスという二つのカテゴリーがあり、B1クラスではアイマスクを装着し、普通なら情報の8割を得ているという視覚を奪いながらも、驚くほどのプレーをする選手たちがいます。B2/3クラスは、弱視者と晴眼者がともにプレーできるフットサルです。―(日本ブラインドサッカー協会のオフィシャルウェブサイトより引用)
「アイマスクをして鈴が鳴っているボールを蹴ります。プレーヤーは見えないので相手ゴール裏にいるコーラーの「ここがゴールだ」とか「前が空いてる!」「横に出せ」「今いける~シュート!」などの指示によって、ボールを動かしながらゴールを狙います。
アイマスクをするのはB1カテゴリーというのですが、そのほかにB2/3という弱視の人向けのカテゴリーもあって、これはフットサルと同じルールでプレーします。もし、この競技がパラリンピックの競技種目になったら目指したいと思っています」
経験を求められ、苦しんだ就職活動
あん摩マッサージ指圧師の資格を持つ近藤は、障害者雇用のヘルスキーパーとして職を探した。しかし、新卒募集と掲げている企業でも「経験がない」と断られた。また補助だから、契約社員だからという理由で給料は驚くほど安かった。