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WEDGE REPORT

2022年9月17日

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平岩俊司 (ひらいわ・しゅんじ)

南山大学総合政策学部 教授

東京外国語大学朝鮮語学科卒業。2001年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士取得。静岡県立大学国際関係学研究科教授、関西学院大学国際学部教授などを経て現職。著書に『北朝鮮はいま、何を考えているのか』(NHK出版新書)。

 この過程で安倍政権はトランプ大統領、文在寅大統領を通じて金正恩委員長に対して日朝関係の進展が必要不可欠であり、そのためには拉致問題の進展が不可欠、と繰り返し伝達したという。同時に日本としても独自に水面下で北朝鮮との接触を図ったのだろうが、その後のコロナ禍もあり、日朝関係は今に至るまで目に見える進展を見せていない。

 こうした観点から考えれば、安倍元首相が銃弾に倒れたことは北朝鮮にとって特別な思いがあるだろう。政権を退いたとはいえ日本の国内政治に大きな影響力を残していた安倍元首相に日朝関係における役割を期待していただろう。

北朝鮮政策の基本を確認し国際社会をリードせよ

 日朝平壌宣言で確認した北朝鮮に対する経済協力は北朝鮮にとって大きな意味を持っていると言ってよい。02年当時、条件が整って国交正常化した場合の北朝鮮に対する経済協力の額について日本政府が正式に発表したものはないが、報道ベースでは60億ドルとか100億ドルなどの数字が出ていた。現在では中国や韓国も同程度の経済協力は可能かもしれないが、日朝平壌宣言で賠償ではなく経済協力方式を受け入れた北朝鮮としては、条件が整えば日本から当然受け取ることができる権利と考えているだろう。

 しかし、本稿で整理した通り、それを受け取るためには核問題の進展を前提とし、日本との個別の交渉を経て、拉致問題について日本の国民世論を納得させなければならない。安倍総理が銃弾に倒れた今、北朝鮮は岸田文雄政権がある程度長期政権になり、なおかつ日本の国民世論を説得できるかどうかを見極めようとしていると言ってよい。もとよりその前提となるのは核ミサイル問題の進展であるが、仮に核ミサイル問題が動き出せば北朝鮮はこうした基準で日本との関係を考えるだろう。

 それを前提にしたとき、日本は、日朝平壌宣言の意味と、拉致・核・ミサイルの包括的解決を国際協調の前提として目指し、対話と圧力をバランスよく使って北朝鮮に姿勢変化を促す、という小泉訪朝以来一貫した日本の北朝鮮政策の基本をもう一度確認する必要があるだろう。

 こと、拉致問題については、いまだ帰国を果たしていない被害者のご家族がご高齢ということもあり日本政府にとって待ったなしの課題である。岸田首相には北朝鮮問題で国際社会をリードする意気込みが求められよう。

 平岩俊司氏のWEDGE OPINION「国防力強化にひた走る北朝鮮 日米韓は打開策を示せるか」はWedge Online Premiumでご覧になれます。日本は国際協力の中で北朝鮮といかに向き合っていくかに焦点を当てた記事となっていますので、是非ご覧ください。

  
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