2022年12月8日(木)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2022年9月25日

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唐木英明 (からき・ひであき)

東京大学名誉教授

1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部教授、日本学術会議副会長、倉敷芸術科学大学学長などを経て現職。著書に『不安の構造 リスクを管理する方法』(エネルギーフォーラム新書)。

 新型コロナウイルスの影響で開催できなかった徳島市の阿波踊りが、8月12日から15日までの4日間、3年ぶりに屋外に演舞場を設置して開催された。筆者もコロナ以前に見に行ったことがあるが、「連」と呼ばれる踊り手の集団が次々登場して独特の踊りを披露する姿は見飽きることがなかった。阿波踊りというと、はっぴ一枚の男性の豪快な「男踊り」と着物を着付けた女性の優雅な「女踊り」が特徴だが、実は「女踊り」が始まったのは戦後のことで、そのスタイルは時代とともに進化しているという

徳島市の阿波踊り(アフロ)

 阿波踊りの不祥事として2018年に報道されたのが、阿波踊り事業の大きな赤字のため主催する徳島市観光協会の累積赤字が膨らんだとして、徳島市が協会の破産手続きを徳島地裁に申し立てた騒動だった。その結果、22年から観光・文化団体、経済団体、市民団体、踊り団体などが参画した「阿波おどり未来へつなぐ実行委員会」が主催することになったのだが、コロナ感染の拡大で20年と21年は開催が中止になった。

 満を持して開催した22年の阿波踊りだったが、全国的な流行の第7波と重なったこともあり、実行委員会の報告書によればチケット販売数は4万3647人、販売率は64%で、予定を大きく下回ったという 。

 祭りが終わって1カ月が経過した今月、阿波踊りが再び話題になったのは踊り手の感染問題だった。実行委員会は123の「連」に対してアンケート調査を行い、感染の有無を尋ねたところ、86から回答があった。その結果、8月11日の前夜祭を含めて参加した踊り手は推定で3425人、そのうち819人(24%)が感染したと回答した 。

 この調査結果が発表されると、新聞テレビは一斉にこれを報道した。そのタイトルを並べると、「阿波踊り、819人コロナ感染報告 3密回避など対策徹底できず」(朝日新聞)、「新型コロナ 819人陽性、えらいやっちゃ 阿波おどり、踊り手の24%」(毎日新聞)、「阿波おどり 対応の不備指摘」(読売新聞)、「阿波おどりで819人感染 徳島、踊り手の4人に1人」(共同通信)、「徳島 阿波おどり 参加の踊り手などの4人に1人が新型コロナ感染」(NHK)などで、いずれも「多数の感染者が出た」「対策の不備だ」という論調で一致していた。

 この問題は2つの面から考える必要がある。第1は、819人の感染者はどのくらい大きな問題なのか。第2に、「対策の不備」と言うが、本当に不備だったのか、対策をすれば感染を防ぐことができたのかである。

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