中国が懸念する地殻変動
中国にとって、最大の関心事はプーチン政権の屋台骨が揺がないかどうかだ。ロシアとは「無制限のパートナーシップ」を約束したのだから心配して当然だ。
ロシア側は中国側に「大丈夫だ」と強く保証をしているだろう。しかし、実際のところはどうか……。北京の心配は高まる。 そうでなければ習主席国家主席が「懸念」を表明する筈がない。
現政権と同様に強権的なプーチン亜流政権が確実に生まれるなら中国は安心してみていられる。しかし、万一、そうならなければ、つまり多少なりとも西側に友好的な政権が生まれれば、心配は募る。今度は西側諸国がロシア支援に乗り出すからだ。
対露経済制裁は中止され、ロシアは次第に欧米民主主義の懐に取り込まれていく。西側は必ずその方向で動くだろう。 正にこれが中国の心配なのだ。
中国はこの過程で影響力を行使しなければならない。元々ロシアは「中国の召使」だとされていて、中国の国益に奉仕する存在だが、中国はそう云う「貴重なロシア」を失う危険がある。 それだけではない。 どうやら中国が「召使」を失う程度の話では済まない筈だ。
まず、ロシアが幾分かでも親西欧の方向に動けば、強硬独裁を一枚看板とする「露中2国間同盟」は事実上崩壊し、中国は孤立する。4000キロメートルに及ぶ中露国境線は俄然その性格を変える。
その上、ロシア自身が北大西洋条約機構(NATO)の敵国ではなくなる。その結果、在欧米軍はアジア太平洋地域へ移動することも可能になる。ここが重要な点だ。
欧米、そして当然日本も新生ロシアと経済や最新技術の移転などに向けて新しい協力関係に入る。長年指令型経済の下で停滞してきたロシア経済は欧米、日本などの支援を得て今までとは全く違う持続成長に向かう。
国際政治にも大きな影響を与える。新しいロシアは国連安全保障理事会常任理事国として今までとは別の行動様式をとるだろう。その結果、安保理の風景は一変する。
国際法の遵守、国際協調、人権や平等の尊重、多数決制度、多文化主義、地球環境をはじめあらゆる地球的問題に関してロシアは概ね国際協調主義に基づいて行動するだろう。地政学的な新時代が到来する可能性がある。化石燃料の大生産国であるロシアが国際法の遵守、契約尊重や透明性ある商事行動を取り始めれば国際経済でも新しい展開となる。