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2022年11月18日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

日本政府は本気か?

 日本凋落の背景をみると、負けるべくして負けたといえる。後出しじゃんけんで言い訳は可能だが、その時は、状況を読めなかったということだ。こうした反省を踏まえ、復興に生かすのか。

 政府は21年6月に今後のデジタル、半導体の方針をまとめた「半導体戦略」を策定した。半導体はあらゆる産業に関連し、デジタル社会を支える重要基盤であり、安全保障にも直結する死活的に重要な戦略技術と位置づけ、政府として積極的に関わっていくことを強調した。米中技術対立が深刻化し、経済安全保障の観点から半導体の国産化への宣言である。

 政府は5月に成立した経済安全保障推進法を受け、日本の経済・社会の戦略的な「特定重要物資」に半導体を盛り込んだ。その流れの中で、経済産業省は6月、TSMCとソニーグループなどが熊本県に作る工場に、最大4760億円の補助金を出すことを決めた。さらに、政府はキオクシアや米マイクロン・テクノロジーの国内工場への投資計画にも支援を表明している。

 国内生産回帰は、半導体製造能力で、米国、韓国、台湾に大きく差をつけられる中、国内で半導体を自給的に安定確保できる体制作りをする狙いがある。

 7月には、米国と半導体分野で共同研究を進めることで合意した。産業技術総合研究所、理化学研究所、東京大学などと研究開発組織を創設する。米企業はIBMなどが参画する。

 政府は、11月初旬に発表した22年度の2次補正予算案で、この日米連携を後押しする意味で、研究拠点整備に約3500億円を計上した。今回設立されたラピダスは、AI、スパコンなどに使われる、回路の線幅2ナノメートルの最先端の半導体(ロジック半導体と呼ばれる)開発を目指す。

 まだ世界でどこも成功していないもので、再び世界の主導権を握る考えだ。政府は700億円を出資する。

 日本の半導体生産は、世界からみて遅れているが、日本の技術が決して世界に劣っているわけではない。生産体制のアップデート、部品を良質な最終製品につなげる橋渡し、国際連携など失われた30年時代の〝失敗〟をどう生かすか。世界の潮流を見極める洞察力も問われている。

 米国との連携を図りながら、内向きだった過去の轍は踏んではならない。ただ、米国も半導体産業の国内回帰を目指しており、これにつられ、日本の強みである半導体製造装置、材料部品工場が拠点を移すことも否定できない。懸念も山積するが、状況を見極めることも大事だろう。

モノづくり再興になるか

 省エネに貢献した日本の技術は、SDGs、GX(グリーントランスフォーメイション)の技術でも貢献できる、強い分野である。そういう意味で、モノづくりにこだわらない、モノづくりなど発想の転換、パラダイムシフトが必要なのかもしれない。

 先ほども触れたが、ラピダスは、「速い」を意味する。名前の意味するところを解すれば、かつて「速さ」を売りに世界市場にでていたのが、韓国、台湾。その速さを見習うと同時に、世界最速の小型の半導体を開発しようという意欲の表れでもある。

 大事なのは、政府を含め官民一体となって、日本のモノづくりを見直し、再考する絶好の契機をものにし、将来につなげることだろう。

  
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