2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年12月22日

Oleksii Liskonih/Gettyimages

 英国の金融家ブラウダーと南アフリカの元野党党首レオンが、Economist誌11月24日号への寄稿‘Bill Browder and Tony Leon argue that money, not morality, dictates South Africa’s support for Vladimir Putin’で、南アフリカのラマポーザ大統領はプーチンに擦り寄り、ウクライナ侵略を非難していない、と批判している。主要点は次の通り。

・ラマポーザはウクライナ戦争で中立の立場を維持していると言いながら、ロシア非難国連決議等に棄権する等プーチンに擦り寄っている。

・その理由にはカネの問題がある。

・理由の第一は、ロシアのオルガルヒ、ヴィクトル・ヴェクセリベルクが権益を持つ鉱山会社がANC(アフリカ民族会議)に多額の献金をしていること。

・第二は、南アの国営武器調達会社が武器、弾薬等をロシアに売却した容疑もあること。

・ラマポーザは、制裁と孤立化がアパルトヘイト終焉に貢献したことを想起し、ウクライナ戦争での表面上の中立を改めるべきだ。

*   *   *

 この記事は、英国の金融家兼政治活動家と南アの元野党「民主同盟」党首が連名で書いたもので、常識的な主張である。

 ラマポーザがプーチンに取り入っている理由については、しばしばアパルヘイト闘争時代のソ連の支援への恩義が指摘される。それは事実だが、既に約30年前までのことである。

 第二は、与党ANC青年部による影響の可能性がある。青年部はANCの中でも大きな、しかも過激に走りやすい勢力である。間違ったメンタリティーが連綿と引き継がれ、ラマポーザに圧力を掛けているのかもしれない。ANC青年部は、ロシアの実施した東南部州併合住民投票に視察団を派遣、同代表団は「美しい、素晴らしい選挙」だったと発言したというが、酷いことだ。

 第三は、ロシアのオルガルヒが関与するANCへの献金やロシアへの武器売却などロシアとの経済取引がラマポーザの姿勢に影響しているかもしれない。第四に、ブリックス有志連合(BRICS)を通じる連帯が予想以上に強いのかもしれない。

 さらにANC政治の過去約15年の劣化が背景にある。マンデラやムベキの時代までは品格のある指導者達がANCを主導、思想も品格あるものだった。しかしそれ以後ズマの時代になり黒人部族主義的な傾向が強まり、そのような黒人勢力によるANC私物化が顕著になったようだ。ラマポーザもなかなかANC改革が出来ない。しかしANCの改革はやらねばならない。


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