インド経済が抱える多くの問題点
一方、他の問題の指摘は同様に厳しい。過去2年のインドの経済成長は急速に見えるが、これはコロナによる落ち込みが激しかった反動で、2019年比ではインドは現状で 7.6%成長である。中国の13.1%に劣り、米国の4.6%との対比でも印象的とは言い難い。アップル、フォックスコンの一方で、グーグル、ウォルマート、ボーダフォンなどは苦境にあり、アマゾンは11月末に幾つかの事業撤退を発表している。
FAが指摘する対インド投資のリスクの最たるものは、経済政策の安定性・透明性の問題だ。投資時点の規則が後に変更され予想利益を喪失しないか、規則はそのままでも、実際はインド国内のコングロマリットに恣意的に有利に運用されることはないか。これらの点について、過去の事例から、海外企業は政府を十分に信頼していない。
第二は、内向きの経済政策である。モディ政権が掲げる「メイド・イン・インディア」推進のための生産目標実現を条件とする補助金の裏腹として、輸入関税は高止まる。アップルのようにインド市場向けにインドで生産する企業は限られており、ほとんどの企業は世界的供給網の中にインドを組み込もうとしている。高関税は海外からの部品調達を困難にする。RCEPからの離脱に代表されるFTA(自由貿易協定)網からの実質的孤立を今後も続けるのはマイナスだろう。
第三は、マクロ経済上の諸問題である。高インフレ、経常赤字拡大、GDP10%に達する財政赤字は問題の深刻さを示している。また、中間層は人口の15%に留まり、いくら情報通信産業で雇用を創設しようとしても、それに対応しうる労働者の数は限られ、雇用増や所得のかさ上げへの効果は限定的だ。
将来的には、米中印の3超大国が世界の趨勢を決める時代が来るだろうが、インドが持つ潜在性を生かすためには、以上述べたような問題に対してインド政府がやるべきことは多いと言わざるを得ない。