下の写真は鮮魚が入った発泡スチロールです。外箱にはトレースするための表示がありません。日本では、このように水揚げ地から生産日もロット番号もバーコードもない状態で市場に運ばれて来ているのが一般的です。
万一、どこかの漁場でIUU漁業や品質に関わる懸念が出てしまった場合、どうやってその安全性を証明できるのでしょうか? 「大丈夫ですから」といってもそこに客観性は存在しません。
鮮魚だけでなく、冷凍原料についても海外と比較しながら見てみましょう。下の写真は、米国産のギンダラの表示です。生産日、ロット番号そしてバーコードとトレーサビリティができることが分かります。
一方で、下の写真は国産の冷凍イカの例ですが、生産日などの表示がありません。このように生産日などが、仕入れる側にすぐわからないケースが、冷凍原料でもまだ一般的です。
下の写真ではトレーパックにバーコード表示があります。しかしながら、写真のような鮮魚では、原料からのヒモ付けはなく、加工場や小売店が起点になっているものがほとんどです。
現実を知ろう
世界ではIUU漁業の廃絶に向けて進んでいる一方で、日本ではIUU漁業の理解が進んでいないのが現実です。IUU漁業で漁獲された水産物が規制の緩い国に入りこんで来ます。
資源管理が進んでいる国々ではトレーサビリティが厳格化されています。一方で漁獲証明がほぼ要求されて来なかった日本は、不正のはけ口となり得て来たのです。
世界ではIUU漁業の廃絶のためにDNA鑑定を使って漁場などを確認し、IUU漁業かどうか判定しようとする動きも出て来ています。
しかしながら、日本の水産物原料(鮮魚・冷凍)のように、そもそも外箱に水揚げ日、ロット番号、バーコード表示さえなければ、IUU漁業かどうか、また安全かどうかなどを判定することは容易ではないのです。
政府は水産流通適正化法を通じて、違法な漁獲物の流通を防ごうとしています。IUU漁業は輸入水産物だけなく、国内で漁獲されている水産物にもあります。これを廃絶されるためには、輸入水産物においては、漁獲証明書が必要な水産物の対象を増やすことが必要です。
また国内のIUU漁業においては、最低限外箱に水揚げ日、ロット番号を表示することです。そして北米・北欧などでは実施されているトレーサビリティの徹底が必要であることを知ってください。
四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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