2024年11月22日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年1月8日

法律適用開始しても続く産地偽装や報告の誤り

 国際的にIUU漁業の商流を絶つ要請が高まる中、20年に可決成立した水産流通適正化法が2年後の22年12月に施行されました。特定第一種水産動植物と同第二種に分類されています。

 第一種として、国内で不法な漁獲がされる恐れが大きい魚種として、アワビ、ナマコ、シラスウナギ(養殖用、適用は25年から)が指定されました。漁業者などの届け出や、輸出時の漁獲証明書などが必要になります。

 次に第二種ですが、IUU漁業で漁獲される恐れが大きい輸入水産物としてイカ、サンマ、サバ、マイワシが指定されました。これらの魚種には、輸入時に外国の政府機関が発行する漁獲証明書の添付が義務化されます。

 わが国では、密漁の報道が少なくない一方で、密漁された水産物のトレースが表示などで明確にわかるようになっていません(後述)。また罰則や罰金が非常に厳しいとは言い難いのが現状です。法律で、アワビとナマコの密漁やその流通に関しては、3年以下の懲役または3000万円以下と制定されましたが、本来であれば抑止ために「以下」ではなく「以上」が最低限必要ではないかと考えます。

 ちなみに欧州連合(EU)では、10年以上前になる2010年には、すでに漁獲証明書がない水産物は輸入出来なくなっています。皮肉にもEU向けに出来なくても、日本向けにはできる状態が続いていたのです。

 日本でも、メロ、メバチマグロ(冷凍)、ミナミマグロ(冷凍)、大西洋クロマグロ(冷凍)といった魚種については、国際漁獲証明制度の対象になっているために、輸入に際し輸出漁獲証明書が必要になっています。またロシア産のカニについても、ロシアからの密輸抑止のために、14年からロシア政府が発給する証明書が必要になっています。しかしこれらは全体の輸入量からするとごく僅かです。 

 22年だけでも、熊本のアサリ、福岡・山口のシジミ、大間のクロマグロなどで産地偽装や不正報告が報道されました。しかしながら、3000万円以下の罰金対象はアワビとナマコそしてシラスウナギだけですので、これらの水産物は、水産流通適正化法で厳格に処罰される対象には含まれていません。

 クロマグロでは国際的な資源管理(WCPFC 中西部マグロ類委員会)により、国別の割当量が決まっています。クロマグロのような魚種で、実は不正にカウントされていない数量がなくならないとなれば、国際的な信用がなくなってしまいます。

トレーサビリティの有無

 下の写真をご覧下さい。ノルウェーから空輸されたアトランティックサーモン(鮮魚)の外箱です。水揚げ日、ロット番号、バーコード表示が見えます。なお、サーモンに限らず、サバ、ニシンなども含めてトレーサビリティが徹底されています。バーコードがない場合もありますが、冷凍品も含めてノルウェーの水産物には、ロット番号や生産日(水揚げ日)の表示があります。

ノルウェーサーモンの外箱には、水揚げ日、ロット番号、バーコード表示がある(筆者提供)

 筆者は10年にノルウェー大使館からの依頼で「サバ・トレーサビリティ調査検討会」の委員を頼まれた経験があります。日本に輸入されたノルウェーサバ原料が加工されて消費者に届くまでのトレースを行おうとしました。しかし当時は加工品にバーコードやロット番号を付ける習慣が、日本ではほとんどないことが壁として立ちはだかりました。

 生産日などの情報表示がされていなかったのは、主に商売上「古い」などといわれて値引き対象になりかねないといった理由からでした。トレーサビリティは、事故等があった際にその原因をさかのぼって自分の立場を立証できるツールになるのですが、理解が進むのに時間がかかっています。

 その後、加工品では進みつつあります。しかしながら、日本の鮮魚・冷凍原料はまだ進んでいません。現状を見てみましょう。


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