同時に「リスク」ももたらしているというミドルパワーは、大国の間で自己利益を得るばかりでなく、侵略などとの関連では自分の安全保障にリスクが降りかかってくることも理解すべきだと指摘する。
ウクライナ支援の際にもミドルパワーの動向が重要に
これから大国間競争が一定期間続くとすれば、これらの国が大国の間で便宜的に動くアクターになる世界が続くことになる。注意を要する。今後世界は、西側、中露、そしてグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)、特にこの社説の言うミドルパワーの3つのグループから構成されることになろう。
もう一つの構造としては、民主主義国と非民主主義国のグループもあろう。ミドルパワーの国々には、得てして権威主義的指導者がいる。これらミドルパワーがキャスティング・パワーを持つことにもなる。国際調整が必要な時、ミドルパワーが国連と共にブローカー(仲介者)になるかもしれない。これらミドルパワーとの連携強化が必要となる所以である。
この社説は、昨秋のG20サミット声明発出でのロシアによるウクライナ侵略の書き振りの成果を挙げ、これらミドルパワーへの働きかけの重要性を指摘する。その通りである。今年(2023年)のG7議長国になった日本としてもミドルパワーとの連携は重要な仕事になる。
ミドルパワーは、この社説が具体的に挙げる4カ国に限られない。ブラジルは、ルーラが元旦に新大統領に就任し、その動きには注目すべきだろう。その意味で林外相が中南米(メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなど)を訪問したことは時宜に適ったことである。報道ではアルゼンチンのBRICS(中露など新興5カ国の枠組み)加盟も取り沙汰されている。エジプトもミドルパワーの一角を占めるであろう。
戦後国際秩序の中で、大国は侵略の当事国にはなり得ないはずであった。ロシアによるウクライナ侵略の戦後秩序への否定的影響は計り知れない。ウクライナ侵略は、未だ先行きが見えない新たな国際秩序(大国間競争)への幕開けになるかもしれない。しかしそれはこれまでの国際秩序に比べれば不安定で劣質なものにならざるを得ないのではないかと心配される。