義務教育短縮で早めに結婚
珍提案飛び出す少子化対策
特に中国で問題視しされているのは不動産価格と教育費だ。不動産価格の上昇が続く中、重い住宅購入費の負担が出産を控える要因になっているという。また、高額の塾に通わせて受験競争を勝ち抜き、しかも大学のみならず大学院、海外留学まで経験しなければ教育競争に勝てないという学歴社会の負担も大きい。
中国政府も遅まきながら少子化対策を取り始めている。あの悪名高き一人っ子政策を撤廃したほか、子ども手当の支給を始めた自治体も増えつつある。
結婚していない女性から生まれた非嫡出子は役所で新生児登録できないといった差別的規定の改定も始まった。学習塾を禁止し教育費を引き下げようという政策まで飛びだした。なお、あまりに過激な規制で10万人以上の失業者が生まれたとされる。
同じ儒教圏の韓国、台湾が深刻な少子化にまったく有効な対策を打ち出せていないことを見ると、ちょっとやそっとの対策では少子化の趨勢を逆転させるのは難しそうだ。
そうした中、話題となったのが義務教育を2年短縮しようという提案だ。大手旅行サイト「トリップドットコム」の創業者にして、人口学者としても知られる梁建章が発表したリポート「中国教育・人口報告2022」では「スマート化時代の仕事、特にイノベーション領域では必要な知識、求められる学位は高まる一方だ。しかし、若者のイノベーションと出産の黄金年齢は30歳前後と変化はない。学業と家庭の間に矛盾が生まれている」と指摘し、義務教育を2年間短縮して早く社会にでれば、晩婚化解消につながると主張している。
政府がこの提案を受け入れる可能性は低そうだが、3月の両会(全国人民代表大会、全国政治協商会議の総称、日本の国会に相当)にはこうした珍提案が大量に出現しそうだ。その中からなにかが採用される……可能性もゼロではない。
「血の川が流れようとも、一人っ子政策違反の子どもは産ませない」といった過激なスローガンや、高額の罰金や強制的な不妊手術、子どもに戸籍を与えない、公務員や国有企業従業員はクビなど、すさまじい強制力をもって推進された一人っ子政策。
約2カ月にわたり上海市民を自宅監禁、飼い犬から感染が広がるかもとペットを撲殺、寝たきり老人の寝室に乱入し鼻に綿棒を突っ込んでPCR検査など、信じられないような話が続出したゼロコロナ対策。
他国ではできない凄まじい政策をやってきた中国だけに、サプライズ的な少子化対策があっても不思議ではない。「そのうち、2人目出産をしない夫婦には罰金とかなるんじゃないの」などと中国人の間ではジョークが飛び交うゆえんだ。