2024年12月12日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年1月25日

 1月17日、中国国家統計局が世界一の人口大国である中国で人口が減少に転じたことを明らかにするや、早速、わが国メディアからも喧々囂々とさまざまな議論が聞かれるようになった。

 ――「世界の工場の維持は危ない」「世界第2位の経済大国からの転落は不可避だ」「人口でそうであるように、経済規模でも程なくインドに追い抜かれる」「膨大な〝おひとりさま男子〟を抱えるイビツいな社会は目前だ」「結婚への経済的ハードルが高すぎるから、若者が結婚を避けるのだ」「超高齢化社会に突入し、2050年には1億人の独居老人を抱えることになる」など――

 確かにそうだろう。このまま人口減少に歯止めが掛からず、少子高齢社会化が加速するなら、習近平政権が突き進んできた富強・大国化路線は、いずれ頓挫の憂き目を見るかもしれない。最悪の場合には、1950年代末に毛沢東が遮二無二突き進んだ大躍進路線と同じような悲惨な結末を招き寄せてしまうことだって想定される。

中国では、61年ぶりに総人口が減少したと発表された(AP/アフロ)

 だが立ち止まって考えてもらいたい。相手は、わが国にとって最も脅威であると大多数の日本人が感じている中国である。その国の国力の基盤でもある人口がピークを過ぎ、軍事力や経済力を背景とした総合国力が衰退に向かことになり、現在の軍事強国化路線に陰りが見え始め、中長期的に弱体化する。いわば「弱い中国」への道を緩やかに歩み出すことになるのなら、むしろ黙ってやり過ごした方が得策だと思う。

 だから、中国の人口減少を、われわれ日本人が敢えて深刻ぶって論じることなど要らぬお節介というもの。相手の将来を慮って心優しく対応する必要も余裕も、今の日本は持ち合わせていないはずだ。

 万有引力の法則に従うなら、上がったものは必ず落ちる。拡大も限界点を超えれば収縮に転ずる。であればこそ、この問題は中長期的視点に立って冷静に受け止めるべきではないか。


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