2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年2月3日

テックで高齢化対策
中国政府が号令

 少子化と表裏一体で進むのが高齢化だ。22年末時点で中国の65歳以上の人口は2億978万人、人口全体の14.9%を占めている。高齢化率(全人口に占める65歳以上の比率)が14%を超えると高齢社会と定義されるが、中国では21年からこのステージに突入している。01年の高齢社会(高齢化率7%)から20年間でのスピード記録となった。

 ちなみに日本の高齢化率は1970年に7%突破、95年に14%突破でこの間に25年を擁している。韓国は18年。中国は日本以上、韓国未満のペースで高齢化が進展しているわけだ。

 中国政府も対策を進めている。2022年2月に公布された「第14期5カ年計画国家老齢事業発展・養老サービス体系計画」は各種の高齢化対策の指針となる法律だ。新たな社区(複数棟のマンションが集まったコミュニティ)を建設する際には養老施設を併設すること、介護人材を育成する学校の定員増加、社会保障制度の整備など多方面の政策が盛り込まれている。

 なんとも中国らしいのは「インターネット、ビッグデータ、AI、5G通信、スマート化、インテリジェンス、クラウドファンディング」といった用語が山盛りで盛り込まれている点にある。高齢化対策もテックを中心に、というわけだ。

 たとえば、リハビリ機器に関する項目では「AI、脳科学、バーチャルリアリティ、ウェアラブルなどの新技術をリハビリ機器において組み合わせ活用する」と言及している。また、脳機能障害や全身マヒの回復を促す従業技術として、脳で考えるだけで機械を動かせるブレイン・マシン・インターフェイスが重要な技術開発目標であるとも言及されている。

 養老施設関連では「地域の養老サービスをプラットフォーム化し、子どもがウェブから注文すると老人がサービスを受けられるサービスの開発を奨励する」とある。子どもが別の地域に住んでいる場合でも、スマホを使うと簡単にお手伝いさんがやってくる、食事が届く、入浴介護が受けられるといったサービスが考えられているようだ。

 SF小説のような未来的な技術から、すでにあるサービスの延長線的なものまで、テックを活用した高齢化対策がてんこもりだ。

 すでに一部ではテックを利用した事例も見られる。認知症の老人の徘徊、失踪は大きな問題だが、中国では監視カメラや警官の持つ携帯端末から全国民の顔認証データベースと簡単に照合できる。自分の名前もわからない老人が見つかったが、警官がさっと端末を取り出しあっという間に本人確認。パトカーで自宅へと送ったのでした……というニュースはいくつも報じられている。

 ちょっと面白いところでは老人がデジタルサービスを使いやすくする工夫だ。ウェブサービスやアプリでは文字を大きくする老人向けインターフェイスの実装が始まっている。大手EC(電子商取引)アリババは買い物アプリに、目が悪い老人向けの読み上げ機能、子どもが親の買い物を管理できる親子アカウント機能を実装した。


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