2023年2月16日付の英エコノミスト誌が、フランス人は歴史的にロシアに惹かれる傾向があり、ウクライナに関するマクロンの外交もその影響を受けていたが、最近それが変化し正しい方向に向き始めたと論じている。
1760 年代から1770年代、ロシア帝国に魅了されたフランスの思想家ヴォルテールは、ロシアのエカテリーナ女帝を「賢明な専制君主」と褒め称えた。
ウクライナ戦争は、フランスのロシアへの宿命的な憧れを露呈した。極左はロシア革命や反米主義など、極右は愛国主義や権威主義的な指導者への憧れがある。
フランスの政治的議論の場では、地政学的に相反する意見が競い合っている。オランド前大統領は、ロシアがクリミアを併合した後、軍艦 2 隻をロシアに引き渡す契約を取り消した。世論調査では国民の6割がウクライナのゼレンスキーを支持しており、プーチンに対する支持は1 割以下だ。
マクロンにとって、今は正念場である。彼は、従来の慎重さと自制を勧める声と、ウクライナで指導力を発揮しロシアの抱く幻想を払拭するよう促す声の両方に耳を傾けている。
マクロンは、戦争中のウクライナを支援することと、和平交渉のテーブルで仲介役を務めることの両方を望んでいる。しかし、ここ数週間、マクロンは、明確にフランスはウクライナを勝利するまで支援すると宣言し、より多くの重火器を提供すると宣言した。
ただし、戦車の供与はまだ約束していない。ゼレンスキーが、「彼は今度こそ本当に変わったと思う」と、ロンドンからパリに移動した 2 月8日、フランス紙『ル・フィガロ』 紙に述べた。フランス大統領に、フランスのロシアへの憧れを完全に捨て去ることを期待するのは無理かもしれないが、彼は正しい方向に進んでいる。
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この記事は英国人ジャーナリストによるものと思われるが、いかにも英国人らしいフランスに関する見方である。
現代のフランスのロシア政策を分析するのに、絶対王政時代のエカテリーナ女帝の話を持ち出すことには違和感を覚える。歴史を辿れば、ナポレオン戦争の際はロシアへの憧憬といった感情は働かなかったようであり、また、19世紀末の露仏同盟はドイツに対抗するための地政学的理由によるものであった。
国益に敏感なフランス人が、感情からロシアに有利な政策をとることも考えにくい。記事の筆者も、親ロシア的傾向が普遍的だという訳ではなく、相対する傾向もあることは認めつつ、マクロンのウクライナ政策については、このロシアへの憧憬という要素が作用していたが、ようやくマクロンも正しい方向に向き始めたと論じている。