最近のペルーの騒擾は、極左政党のペルー・リブレをボリビアからの工作員や元諜報担当大佐の在ペルーのキューバ大使らが支援している。更にその資金源や手足となっているのは、鉱物資源の違法採掘業者や大麻栽培麻薬組織であるとの現地筋の情報もあり、彼らはイラン政府やその配下にあるヒズボラと密接な協力関係にあるという。
トランプの失敗から対話に舵を切ったバイデン
バイデン政権としては、ラテンアメリカの独裁主義国家に対するトランプの最大限の圧力政策が結果的に何らの成果も挙げなかったことに鑑み、キューバやベネズエラを含むラテンアメリカ全体との関係を圧力ではなく対話と外交によって改善しようと意図しているのだろう。
キューバに対する長年の経済制裁はもっぱら国内のキューバ系政治家や有権者に対する政治的配慮によるものでもあったが、これらの措置がキューバの民主化に貢献したとは言えない。オバマは、そのような対キューバ政策を転換しようと関係正常化に着手したが、トランプはこれを覆し、更に政権の置き土産のように2021年1月にキューバをテロ支援国家リストに加えた。
キューバ側の要求は、テロ支援国家から外すことであるが、同年7月の反政府抗議運動に対するキューバ政府の弾圧という事態に、バイデン政権は、キューバに対する制裁措置を緩和することが難しくなった。米側が新たな措置をとる可能性としては、キューバ側から何らかの歩み寄りがある場合、あるいは、キューバ政府ではなくキューバ人一般を対象とした制裁緩和措置を取ることであろう。
キューバがイランなどと共謀してラテンアメリカの左傾化や反米化を図る工作に対しては、元ペルー内務次官の証言を鵜呑みにはできないまでも、バイデン政権としては必要に応じ対応するであろう。そのような動きとは別の次元で、バイデンは、ラテンアメリカの独裁政権に対して制裁圧力による硬直的対応から、外交上の対話により民主化を求める路線に切り替えようとしていると見られる。
もっとも、キューバのテロ支援国家リストからの解除は象徴的な問題となってしまっているので、キューバ側が相当な歩み寄りを行わない限り、米国内で納得を得ることは難しいだろう。