中国は今回、外交トップの王毅共産党政治局員の下、サウジ、イランの高官2人が5日間にわたって北京で秘密協議し、合意にこぎ着けた。発表された共同声明には「習近平国家主席の積極的提案に両国が応じた」と明記された。これは今後、政治大国としてもイニシアチブを取っていくとの宣言でもある。
不意打ち食らったイスラエル
和解の発表が行われた時、イラン核施設への軍事攻撃を主張してきたイスラエルのネタニヤフ首相はイタリア訪問中で、全くの〝不意打ち〟だった。発表に対する質問に一切答えなかったのはショックの大きさを示すもの。首相の優先的な外交目標は第1に「イラン包囲網」の強化、第2にサウジとの国交樹立だが、この戦略が瓦解してしまった。
イスラエル国内では、首相の推進する司法改革で国内は真っ二つに割れ、反政府デモは拡大する一方だ。イタリアでは、イスラエルからサウジまでの鉄道網建設の可能性にまで言及していたが、こうした能天気な首相に野党などからの批判は強い。「自分の裁判を有利にする司法改革にかまけているから、イラン・サウジ対応ができなかったのだ」(野党政治家)。
後れを取ったのはバイデン政権もイスラエルと同様だ。サウジから事前に報告は受けていたとされるが、中国の仲介に乗ったということは「バイデン政権を信頼していない証拠」(米紙)だろう。
サウジ、イランが2カ月以内に大使館を再開するとしていることについて、政権幹部は「イランは信用できない。実際に再開されるかはなお不明だ」と述べている。中東の重大な展開から外された負け惜しみに聞こえるのは筆者だけではあるまい。