2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2023年3月16日

 WKCDのある関係者は「世界各国を訪れて芸術コレクションを集め出したとき、国安法が制定されるとは思っていませんでした」と振り返る。「素晴らしい芸術作品の中に政治を扱ったものが存在してきたことは、芸術の歴史からも明らかです。政治的な作品が展示されないと物足りなさを感じる来場者がいると思います。これから、どうするべきか模索中です」と苦しい胸の内を語る。

香港はアジアの競争に勝てるのか

 官主導によるアジアの芸術のハブになるための構想のピースは揃った。また、香港政府は逃亡犯条例のデモや国安法によりイメージが悪化したことを自覚しており、改善したいと思っているが、国安法に関しては厳密に法を執行する構えを崩していない。アート関係者が忖度せざるを得ない状況になっている。

 日本のプロサッカーJリーグなどを見てもわかると思うが、地元密着で根付かなければ花はなかなか開かない。芸術は基本的に表現の自由を求めるだけに、香港の芸術家が自由に創作でき、展示できる環境が整わないと定着しにくい。

 そして、芸術とお金も表裏一体の関係であり、香港で稼げなくなれば、お金の稼げるところに芸術マーケットも移動する。シンガポールやソウルもアートを支援しており競争は激しくなっている。香港で芸術に向けられるビッグマネーが動き続けるのか、政治的影響で市場は萎んでしまうのか。ジレンマを抱えた香港の今後の方向性に注目だ。

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