2024年4月20日(土)

WEDGE SPECIAL OPINION

2023年3月20日

憲法改正しなくても地方議会は変えられる

 民主主義は、「手続き」を重視する。その手続きには手間や時間がかかるが、そのプロセスの中で自分とは異なる意見や考えもしなかったような意見に触れ、考え、折り合いをつけるといった術を身につけていくというのが本来の姿だ。

 聖徳太子が制定した十七条憲法の一条「和を以て貴しと為し、忤うることなきを宗とせよ」という言葉が象徴するように、日本人の特徴として「協調性」が挙げられる。協調性とは、本来、異なる意見に耳を傾けながら結論を探ることだ。だが、今の日本社会は自分の意見を持たないまま、周囲に自分の考えを合わせる、あるいは合わせさせる「同調性」「同調圧力」が強いだけのように見える。

 私はこれまで183回の経験から、「自分ごと化会議」は「同調圧力」を抑え、本来の「協調性」を育む上で大いに有効だと考えている。日本の政治、社会をこれ以上同調圧力の強い危険な状況にしないためにも、多くの国民が社会のことを「自分ごと化」できるような環境や仕組みを整えることが不可欠だと思う。

 日本の各地を訪れると分かるように、「地方」とは実に多様であり、それゆえに住民の意見も多様であることは必然だ。

 だからこそ、地方議会制度も全国一律である必要はないと思う。大刀洗町の住民協議会のように、憲法や法律を改正しなくても、地域住民の声を行政に反映させることは十分にできる。憲法改正など大上段に構えた制度改革をしたからといって、住民が社会のことに「他人ごと」である限り、事態は好転しない。もっと手前の段階で、われわれにできることはたくさんある。

 愛国心は愛郷心の延長線上に育まれる。一体感のある国づくりには、土台となるしっかりした地方が必要だ。まずは住民が地方自治を「自分ごと化」する動きが広がることで、地方議会の改革も始まると思う。そして、日本の政治は地方から変えられるということを、多くの住民(国民)が実感できるようになるはずだ。(聞き手/構成・編集部 大城慶吾、野川隆輝)

 
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 あなたはご存じだろうか。自分の住む地方議会の議員の顔を、名前を、どんな仕事をしているのかを─。住民の関心は高まらず、投票率の低下や議員のなり手不足は年々深刻化している。地方議会とは一体、誰のために、何のためにあるのか。4月に統一地方選挙を控える今だからこそ、その意義を再考したい。

   
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