新党「日本維新の会」が発足し、主導権をめぐる綱引きが表面化している。混乱は新党だけではなく、既存政党でも日常的に発生している。政治の堕落の根治療法は選挙制度改革でも「ねじれ」解消でもなく、法律で政党にガバナンス確立を義務付けることである。多額の税金がつぎ込まれながらガバナンスに関して規程がないのはおかしい。
9月12日に行われた「大阪維新の会」の政治資金パーティーで、橋下徹大阪市長は国政進出を目指す新党「日本維新の会」結成を正式に宣言した。
この時点で党として決定していたのは、橋下市長が党綱領と呼ぶ「維新八策」だけである。党規約もマニフェストも決まっていなかったが、同月中だけで現職の国会議員9人が合流した。
この中には比例区議員も含まれているが、政党の鞍替えは有権者の意に背かないのだろうか。そして、「所属国会議員5人以上」という支給要件を満たしたことだけにより、「政党助成金」という多額の税金が新党に支払われるのである。
橋下市長は日本維新の会の党首になるが、次の国政選挙に出馬しないと明言している。その後作られた規約では、代表は重要事項の決定に拒否権をもつという。
選挙後、日本維新の会が連立を組み国務大臣を出した場合、党内では大臣が大阪市長の指示を受けることになる。仮に、総理大臣を出すこととなった場合、党内では「大阪市長>内閣総理大臣」という不思議な構図が生じてしまう。
社会保障政策や原発を含むエネルギー政策など、国政と大阪市政が対立しそうな案件はいくらでもある。党首と市長の立場は区別するとはいっても、国の最高責任者が、党首の下にいる構図は変わらない。中身より政党という形づくりを優先したことが、早くも党内の権力争い、ガバナンスのなさを露呈している。
政党には、約320億円の税金(政党助成金)と非課税の寄付を併せ、年間1000億円以上がつぎ込まれている。政党は極めて公共的な存在のはずだが、運営や情報開示などいわゆるガバナンスに関する規定がない。実はこれは主要国の中では珍しい状態である。