これを抑制し、政策間の整合性を確保するのが先述の(2)だ。そのためには、有権者が各党の政策を比較し易いよう、重要政策は5項目程度として、優先順位を明確にするなどマニフェストの定型化も考えられる(何十項目もの政策を同時に進めることは事実上困難)。
さらに言いっ放しの状況にさせないよう、与党は半年ごとの進捗度発表を行う。また公約を変更するときに重大な説明責任を課す。これらにより、政権公約に緊張感と現実感が生まれ、責任ある政策実行に繋がる。
良質の政治には、力のある野党の存在が不可欠である。しかし、野党には政策立案のための人的資源、資金、情報が十分でなく、民主党がそうだったように、現実性のある政権公約を打ち出しにくいという構造的な問題がある。
これを改善するため、政府の野党に対する情報提供を制度化し、政策立案費として野党への政党助成金の配分を拡充するよう政党助成法を改正するといった措置が考えられる。
チルドレンを防ぎ説明責任を課す
次に(3)の候補者の質向上について。政治は高い志や能力があっても、新規参入が困難な世界だ。いわゆる世襲問題以外にも、○○チルドレンと呼ばれる、時々の旋風に乗っただけの議員がむしろ増える傾向にある。
有為の人が立候補しやすいようにするためには、各党の立候補者の選定を第三者機関で行うなど、選定方法や過程を党則で規定するよう政党法で定めてはどうか。安易な政党の鞍替えをなくすため、曖昧な「公認」、「推薦」、「支持」の定義を明確化させることも必要だ。
さらに「世襲」と「非世襲」間の資金力の公平性を確保するため、政治資金管理団体の相続禁止を政治資金規正法に盛り込むべきだろう。
有為の人材を政界に送り込むには、社会の協力も欠かせない。退職しないと立候補できない現状では、落選はあまりに大きいリスクだ。
政治の堕落を嘆く企業経営者は多いが、それならば民間の人材が政界にチャレンジしやすくなるように、休職制度を導入してもらいたいところである。政治家の国際競争力強化は国家にとって重要な課題だ。
最後は(4)の有権者に対する説明責任である。先述のとおり、政党は1000億円以上の税金および非課税の資金を使う最も公共的な度合いの高い団体でありながら、社会に対して説明責任をほとんど果たしていない。議員個人には政治資金の発表義務があるが、政党全体の情報開示があまりに甘い。