2024年2月22日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年4月4日

反西側言説・多極化世界構想としてのロシア支持

 2月24日に習近平政権が発表した「ウクライナ危機の政治解決に関する中国の立場」では、「各国の主権・独立と領土の一体性は切実に保障されるべきである」という。しかし、各国の独立のありようや領土が具体的にどのような状況・範囲を指すのかについて、習近平政権は一切説明しない。さらに中国は「一国の安全は、他国の安全を代価とすることはできない」「地域の安全は軍事集団を強化し、拡張することによっては保障されない」という。

 要するに習近平思想は、ウクライナ南東部を強奪して得られた「新領土」を含む「ロシアの一体性」を尊重するかたちでの「平和的」な解決が望ましいとみている。そして習近平思想は、ウクライナの安全保障を求めるウクライナや北大西洋条約機構(NATO)の立場は、ロシアの利益を毀損するため認められない、と暗に言いたいのである。

 しかし、NATOのストルテンベルグ事務局長が「中国はあまり信用されていない」とコメントした通り、ある意味当然のように「立場」の評判が芳しくないためであろうか、3月7日に記者会見を行った秦剛外相は、ウクライナ危機をめぐって次のように述べ、事態の責任を米国とNATOに転嫁した。

 「ウクライナ問題の本質は、欧州における安保ガバナンスの矛盾が大爆発したものである。見えざる手(=米国とNATO)が衝突の引き伸ばしと悪化を仕掛け、ウクライナ危機を通じて地政学的な利益を得る陰謀を試みている。ウクライナ危機における各方面の合理的な安全への関心は全て尊重されるべきだ。中国は独立自主で判断し、和平と対話を重視している。危機の製造者・当事者ではないし、武器供与もしない。何を根拠に中国に責任をなすりつけ、制裁や威嚇を加えるのか?」

 しかしそもそも、徹頭徹尾ロシアの側に立ち続けていることこそが習近平政権の責任である。結局は習近平思想における反西側言説・多極化世界構想こそが最優先であり、プーチン・ロシアは得難い協力者だということなのであろう。

 習近平氏がモスクワを訪問し、伝えられるところによると10時間以上にわたって緊密な会話を交わし、パートナーシップを大々的に誇示したことは、そのような態度表明に他ならない。昨年9月の上海協力機構・サマルカンド首脳会談の際に、プーチンを前にして習近平氏が示した今ひとつれない態度とは全く対照的である。

 この時はまだ、中共第20回党大会における習近平3選の前であり、西側とロシアの双方を睨んで中国の立ち位置を測りかねていたか、それとも自らの3選を前に外交上明確すぎる態度を示すのを先送りしたかのいずれかであろうが、少なくとも方針が明確にならなければ、かくも大々的で記念すべきモスクワ訪問にはならないはずである。


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