2024年2月22日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年4月4日

日本がとるべき選択

 この先にあるのは、ユーラシア大陸にくすぶる剥き出しの強権がグローバルな規模で広がり続け、彼らなりの「国情」を振りかざしつつ、規範に基づく国際秩序を揺るがす混沌の世界である。それは、文明や文化を異にする他者どうしが時間をかけて共通の規範を見出し共有しようとしてきたこれまでの人類社会の知的営為の否定であり、グローバリズムの深刻な危機・敗北を意味する。

 その中で習近平思想は具体的に、多極化世界における自らの足元たる東アジア、そしてアジア・西太平洋地域を自らの「圏」と見なし、その中心にいるのはかつての「反ファシスト戦争」の勝者にして、今や「西側にも勝った」中国であるという姿勢をいっそう強めよう。そして、ウクライナに対するロシアの発想と同じく、「米国や西側ではなく中国との協力・中国の恩恵があってこそ、真正の日本の繁栄がある」と称して、日本の政策決定の余地を狭めようとするであろう。

 それが好ましくないと思うのであれば、日本は一層、開かれたアジア太平洋秩序、法の支配に基づく国際秩序の擁護に向けて、志を同じくする国々やNATOなどの組織との一層緊密な協力を打ち立てつつ、日本自身の経済と社会の質と魅力を盛り返すことが喫緊の課題と言える(とりわけ中国は「グリーン経済」を掲げ、莫大な投資を続けている)。そして中国に対しては、「現状の内政と外交では中国の将来の可能性を狭めるだけであり、他国を圧倒する世界観ではなく、誰もが受け入れられる共通の規範のもとで相互尊重の関係を築く」ことを求め続けるべきである。

 このような意味において、日本が秦剛新外相から「日本のいう秩序などビリビリに引き裂いてやる!」と罵られたのは、実は日本が普遍的価値観に照らして適切な方向を歩んでいるということであり、この上もない名誉なのである。

 その秦剛外相は、去る4月2日に開催された林芳正外相との会談の場で、「平和共存、友好協力が中日両国にとって唯一の正しい選択だ」と強調しつつも、同時に経済的な規制をめぐって「矛盾や分岐をめぐって一部の国々と結託して(拉幇結派)、大声を叫んで圧力をかけるだけでは問題は解決せず、相互の溝を深めるだけだ」と牽制した。中国は、自国の市場の巨大さという魅力と、それが中国自身の「自立・自強」のために日本を排除したものになる可能性を目の前にちらつかせ、改めて日本に対して「米国・西側を選択して低迷するのか、それとも多極化世界における弱小な極として自立しつつ、中国との協力によって生きる道を選ぶのか」と暗に迫ったと言える。

 しかし、そのような交渉を前にして日本人ビジネスパーソンを拘束することと、プーチン・ロシアに従わないウクライナを侵略し「ナチからの解放」を掲げることと、発想において一体何が異なるのだろうか。中露両国を日本単独で牽制できないのであれば、やはり開かれた規範を重んじる国々との協力により、中国自身の変化を待つ以外にない。

   
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