ヘリテージ財団アジア研究センター長のウォルター・ローマンが、6月24日付で同財団のウェブサイトに掲載された論説で、フィリピンによる台湾漁船銃撃事件から得られた教訓は、台湾を外交的に孤立させるべきでないということであり、台湾を地域に外交的に統合していかなければならない、と論じています。
すなわち、フィリピンの国家捜査局(NBI)は、台湾漁船銃撃事件に関与したフィリピン沿岸警備隊員を訴追するよう勧告した。NBIの勧告は、事件の分水嶺である。それは、台湾側の説明に信頼性を与えてくれるし、フィリピンの捜査能力に保証を与えてくれる。
捜査結果の公表を待ちつつ、米国は、事件から得られた、以下のような外交的教訓をよく検討し、東南アジアの友邦がそれらを吸収することを助けるのが良い。
1.台湾は、地域の外交的構造に統合されなければならない。台湾の孤立は、当事国双方の反応に制約を課し、しばしば紛争を悪化させる。台湾の指導者、大臣、軍が地域の他国と対話する場が必要であり、恒常的な 対話は、危機に際して信頼と接触の基盤を与えてくれよう。
2.台湾が慣習国際法に訴えるのは良いことである。台湾は、国際法への訴えに関して、より一歩踏み出すべきである。台湾は、南シナ海ほぼすべてを含む9点線(nine-dash map)を主張しているが、それは中国の主張と同一である。台湾は、この海洋権益の主張を、海洋法条約に準拠した地形に由来するものとして、定義し直さなければならない。それと引き換えに、地域の外交的構造への台湾の統合を、南シナ海問題の管理についての地域的メカニズムに台湾を正式に迎え入れることから始めるべきである。
3.東南アジアの国々は、「一つの中国政策」について、新しい見方をするべきである。ASEANとその構成国は、中華民国(台湾)を正式に承認する必要はない。今回の紛争を通じて問われているのは、アキノ大統領が台湾に謝罪をするのか、それはどういう形か、フィリピン政府から補償は支払われるのか、双方は漁業協定を結ぶことができるのか、といったことであるが、「一つの中国政策」へのフィリピンの過剰な配慮によって複雑化している。米国は、30年以上にわたって、「一つの中国政策」を、台湾との間で、不十分ではあるが、広範な「非公式」の公式対話が可能なように、何とか運用してきた。日本や豪州も賢明で柔軟な政策をとっている。東南アジア諸国も、台湾を柔軟に扱う政策を考えるべきである。