2024年11月25日(月)

Wedge OPINION

2023年5月1日

 「岸田内閣の中間評価」というべき今回の補選、個々の戦いは山口4区を除いて辛勝だったものの全体では4勝1敗の圧勝。岸田文雄首相の支持率も上向いてきたことが前者の主張の根拠になっている。統一選前半に続いて躍進した日本維新の会の総選挙準備が整わないうちに、という計算もある。

 5月に首相の地元、広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)の成果を誇示して解散、安倍晋三元首相の一周忌翌日の7月9日に投票という説がまことしやかにささやかれている。

 一方、後者は、無党派の票が維新に流れたことを深刻にとらえ、勢いづいている同党と再び戦うのは危険だという判断による。

 岸田首相周辺には、現時点で解散して、仮に勝利したとしても、再選を狙う来秋の自民党総裁選まで1年半もあるため、勢いが持続しないだろうという懸念も少なくない。与党の一角である公明党が今回の地方選で大きく議席を失い、党全体が疲弊して総選挙を戦う余力がないという事情も考慮されているようだ。

現状で解散・総選挙の理由なし

  いま吹き荒れている解散風はどこから来たのか。

 内閣不信任案が可決されたわけでもないし、重要法案で与野党が全面対決し、有権者の判断を仰ぐべきという状況でもない。与野党の勢力が拮抗、政策遂行が困難になり、その解消めざして総選挙を行う必要があるかといえば、与党が絶対安定多数を確保している現在、それもあてはまらない。

 明らかなのは、ベストタイミングでの解散によって、党は勢力伸長を図り、個々の議員は、自らの議席を守ろうという目論見が伝わってくることだ。

 国民の付託を受けた465人もの議員のクビを一瞬にして切る衆議院の解散は、内閣総理大臣に与えられた大きな権限だ。天皇の解散詔書には首相のほか閣僚の署名が必要だが、閣僚が反対しても罷免することができることから、首相の専権事項といわれる。

 それだけに、首相とはいえ、自由に国会を解散する権限を独占させて弊害が生じないかという懸念は以前からくすぶっている。日本と同じ議院内閣制を採っている英国では、最近の一時期、下院の解散には、院の同意を必要とするなど、首相の解散権が法律で大きく制限された。

 日本の総理大臣は、政治的には常に政争など与党内の権力闘争にさらされるが、法的にみれば、その権限、権力は米国大統領などよりも強大といわれる。衆院解散のフリーハンドをもつという一事だけで、その理由の説明がつくとされる。


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