5月15日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)にて、同紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、「習近平の台湾野望は中国の台頭を脅かす。島を取るための戦争は過去40年北京がなし遂げた進歩を破壊するだろう」との論説を書いている。
習近平は、鄧小平の「時を待つ」政策は放棄し、「あえて戦う」中国を選んだ。もし習が戦いは戦争を意味しないとしても、中国は競争相手と対決するとのシグナルを出した。
習は、彼の政策は米国の侵略への反応であると主張する。しかし習は3つの面で間違っている。1つは米国の意図を読み誤っている。2つ目は米国の政策が中国経済に与える影響を過剰評価している。3つ目は米国との対決リスクを過小評価している。
中国の識者達は、米国は中国を台湾戦争に引き寄せ、中国の台頭を妨害しようとしていると主張する。もしそんな罠があったとしても、習は台湾を攻撃または封鎖しなければいいだけである。中国人は、米国は中国経済を絞め殺そうとしていると不満を言う。米国は先端技術の輸出制限は中国の戦争遂行能力に限って向けられたものであるとして、そのような意図を否定している。
今年、中国は日本に代わり、世界第1位の自動車輸出国になるとされている。中国は将来を支配する電気自動車で優位にある。ビル・ゲイツは米国の先端技術の対中禁輸は中国により早くその能力を開発することを奨励し逆効果だと言う。世界には最大の貿易相手国が中国である国は120カ国以上ある。米国よりずっと多い
もし習が台湾への引き金を引き、米国が紛争に参加したら、習は第三次世界大戦を始めたことになろう。もし台湾がすぐに降伏するか、米国が介入しなかったとしても、中国の世界的イメージは永久に変わるだろう。現在どっちつかずの全ての西側の会社や国は厳格な制裁に参加するだろう。世界経済は粉々になり大きな損害をもたらすだろう。
このようなリスクにもかかわらず、習は、台湾の征服は歴史の教科書に「中華民族の偉大な復興」を成し遂げた指導者として残ると信じるかもしれない。しかし歴史の本に目を向ける指導者は、事態が彼らのコントロール外になる事態にしばしば遭遇する。
プーチンは短い栄光に満ちた戦争への彼の希望が、とんでもない方向に行くことを目の当たりにしている。プーチンは、大国の地位を経済力ではもはや望みえない国を指導している。習はまだ、偉大な国家を実現するための、経済的な「道」を持っている。その道を彼はとるべきである。
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このラックマンの論説は、「中華民族の復興」を、習近平は、台湾の武力制圧ではなく、中国の経済力の強化を通じて成し遂げていけばよいと論じたものである。この考え方には一理も二理もあり、習近平がそういう方向に中国の舵取りをすることを強く望む。