林野庁:間伐を実施することで、森林は以下のようになります。光が林内に差し込むため、幹や根が太く発達する。
私:意味不明。「残存木1本当たりの受光量が増えて、幹や根が太く発達する」の意味なのか。
林野庁:下層植生が繁茂することで風害や山地災害に強くなる、森林の水源涵養機能や土壌保全機能が高くなる。
私:下層植生の繁茂が風害対策に有効なのか。それほど下層植生が大事なら、皆伐後植栽せずに、草を生やしておけばよいということになるだろう。下層植生を重視するにしても、もっと書きようがあるだろう。
いやまったく、あきれたものだ。日本の森林・林業の総元締めの林野庁の見解とは思えない。
そもそも間伐の幅広い意義・目的がどこにも見当たらない。ただ下層植生の評価に終始して、何か下心があるのではないかと疑いたくなる。「木を見て森を見ず」のことわざがあって常日頃自戒としているが、これでは「草を見て森を見ず」ではないか。
最近の役所事情はよく分からないが、国会答弁書の作成でこのような本質を外した回答案を書いたら上司に叱責されるに違いない。以前は政策と国民とのつながりは国会を介するものだったのだが、ネット社会になってホームページで直接つながるようになった。
ホームページは国会答弁並みに真剣に作って、省庁の幹部もしっかりチェックすべきである。ホームページを安易に扱うことは主権者の国民を軽視することだ。官僚としての基本を大事にしてほしい。
林業経営における間伐の目的と効果
間伐は、林分(りんぶん)(一団となった同質の森林)を構成する林木(りんぼく)の本数を減らすための伐採である。農業や園芸でいえば、間引(まび)きにあたる作業で、その目的は、多数に及ぶ。
私は、木材という商品の生産、林業経営に軸足を置いて書いている。そのつもりで読み進めていただければありがたい。
まず、間伐材を販売して収入を得る。最終的な収穫行為である主伐に至るまで長期間を要する林業では、間伐で中間収入を得ることができれば、経営上有益である。
また、林分密度(林木の本数)を減らすことは、林木の競合を緩和して、残存木の品質に影響を与える。
競合が緩和されれば、林木の肥大成長(直径成長)が促進される。すなわち残存木の太りがよくなる。ただし、太さと品質は別問題である。
肥大成長の促進によって年輪幅は広くなることを活用し、間伐率を操作して年輪幅を均一に仕立てることもできる。
そして、優良木の選択・保存が、篤林家がもっとも重視する間伐の目的であろう。最終的な伐期まで保残する優良木を選択するのである。ドイツで行われている将来木の選定もこれに当たる。
間伐を繰り返すことによって、品質の高い林木に集約していくのである。ただし、将来にどのような木が珍重されるのか予想がつかないから、なるべく多様性のある選木にするべきであろう。
こうした優良木を集約するためにも、曲がり木、二股(ふたまた)木(根元から幹が二つに割れている木)、折損木(折れてしまった木)、劣勢木(陽光が制限され成長が劣っている木)、病害木(病害虫に罹った木)、枯損木(枯れて死んでしまっている木)などを間伐することが重要だ。通直、健全な林木をそろえることができる。不良木がない林内は見栄えがよい。