電力料金値上げの影響はどれほどあるのか
ここでは、今回の値上げが家計に及ぼす影響を定量的に評価するため、実際の家計調査のデータに基づき、値上げ後の電気代がどの程度になるかをシミュレーションしてみることとする。
表2は、図2に示された2023年3月時点の地域別家計の電気代支出と可処分所得を「家計調査」(総務省)より数値表として示したものである。この表のAの1カ月の電気代支出に、表1に示した今回の電飾会社別の料金改定率を掛け合わせて、値上げ後の推定電気代支出を計算することとする。
電力料金の値上げにより家計が電力使用量を減らす場合には、電気代支出が減る可能性も考えられる。しかし、電気は生活の基礎として変動が小さい支出項目として考えられる。
例えば生クリームの高騰でデザートのケーキの代金が高騰した場合は、今月はケーキを買うのをやめようかとなりうるが、電力使用に関しては「今月は電気を使うのをやめようか」とは簡単にはならない。このように、電気の使用を簡単には減らせないからこそ、政府が生活必需品の物価対策として「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」を交付したのである。
そこでここでは、値上げ前とほぼ同様に生活必需品として家計が電力を使用した場合を想定している。
表3の結果によると、今回改定率の大きかった北陸電力管内の北陸地方では、1カ月の電気代は1万円に近い水準で支出が増加する。これに対して、値上げ率は高かった沖縄電力管内の沖縄地方は3000円台と比較的小さな支出増と試算されている。なお、今回値上げの申請をしていない電力会社の管内の地区では、当然支出の増加分はゼロと試算される。
電力料金改定の申請をしなかった電力会社の管内の地区を含めて、値上げ前と値上げ後で、家計の1カ月の電気代を比較したものが、表4である。
値上げ前では東北地方が1カ月の電気代が最も高く2万5000円近くであったが、改定後では、値上げ率の高かった北陸電力管内の北陸地方が3万2000円近くと最も高くなると推定される。
この結果は、地域別の電力料金の改定率と地域別のもともとの電力購入の性向によって決定される。このため、電力料金改定率の大きかった北陸電力管内の北陸地方と、電力をともともと多く購入している東北地方で改定後の電力料金が1カ月当たりで3万円代と推定される結果となった。