最も家計にダメージを与える地域は?
最後に、家計に及ぼす影響を可処分所得に対する比率で評価したものが表5である。もし1カ月の電気代支出が高くとも、可処分所得に占める電気代の比率がさほど高くなければ、電力料金値上げが家計に及ぼすダメージはさほど大きくないといえる。表5では、値上前の可処分所得比(C欄)、値上げ後の推定された可処分所得比(G欄)、そしてその変化(H欄=G/C)を高い順にランキングしたものである。
表5の可処分所得比のランキングは表4の支出金額のランキングと似た傾向を持っているが、細かなところで違いがある。例えば、東京電力管内の関東地方は、表4の金額では、改定前で7位、改定後では6位となっているが、関東地方の可処分所得は高いため、可処分所得比では改定前で8位、改定後でも7位となっている。家計の可処分所得に占める割合(G欄)でみても、やはり北陸地方と東北地方での影響は高く、可処分所得の10%に近付きそうな勢いとなっている。
ただし、改定前の可処分所得比と改定後の可処分所得比での変化を見た(H欄)場合には、東北地方は第5位となり、関東地方も改訂なしの地区に近い影響にとどまっている。ここでも、北陸地方の電力支出の性向の高さと改定率の大きさが大きなインパクトをもたらしているといえる。
今回は、電力料金の改定による家計への影響を見たが、表4や表5などに示された結果は、家計の「電力」使用に限ったエネルギー関連支出へのインパクトである。また、電力会社に中には、コスト的な事情だけではなくさまざまな理由があって今回申請を見送ったケースもある。さらに、地域によっては、石油暖房やプロパンガスなどの他のエネルギーへの支出の影響が大きなケースもある。
ひとえに「電力料金の値上げ」といっても、地域によって影響の度合いは大きくことなる。政府は物価対策として家計のさまざまな支出や各支出の重要性を総合的に評価して実施する必要がある。何よりも、電力という生活インフラの安定供給は国としての責務としなければならない。