同じく、同講座に参加したBさん(30代男性)は、シングルファーザーとして4歳の息子を一人で育てる。子育てに関する悩みを相談し、情報交換をしたくとも保育園のママ友コミュニティーにはなかなか入ることができない。もっぱら学生時代からの異性の友人や母親に質問したり、YouTubeの子育て動画で勉強したりするも、やはり子育てに関する不安は尽きない。毎日8時30分には保育園に送り、17時には仕事を切り上げて迎えに行かなければならないため、育児と仕事の両立についてもいまだ「解」が見当たらない。
「いつしか、子どもと遊んでいる時間を『子どものために費やす時間』と捉えていました。仕事をしたい、スマホを見たい、という自分の欲求を我慢して、子どものために、公園遊びに付き合ってあげる感覚と言いますか……。それは決して苦ではないものの、どこか〝自己犠牲〟のような気持ちがありました」
でも――とBさんは話す。
「講座で紹介してもらった知育玩具を早速3つ購入し、息子と一緒に遊んでみたんです。そうしたら、その遊びを楽しいと感じている自分に気づきました。たまに、私の両親も交えて3世代で一緒に遊ぶこともあります。今の私にとって、夜ご飯を食べ終わった後に息子と知育玩具で遊ぶ毎日の時間は、何ものにも代えがたいひと時です」
子どもをあやすだけでなく、
成長を実感する存在
日本知育玩具協会の藤田篤理事長は、知育玩具の対象年齢について、「4歳から99歳まで」と説明する。遊びの中で、子どもの非認知能力の発達を後押しし、親世代が子どもと過ごす時間をより濃密にし、そして、祖父母世代にとっては認知症予防効果を持つ。
「記憶力や俊敏性は孫世代にかなわなくとも、祖父母世代には、人生経験を通じたしなやかさや許容力がある。同じ遊びを通じて互いの強みや弱みに向き合うことで、世代を超えた豊かな時間を共有することができるはずです」(藤田理事長)
おもちゃには、子どもをあやすための道具以上の価値がある。知育玩具に関する理解を深める中で子どもの発達課題に向き合い、これまでにない体験価値を得る可能性が広がる。そうして子どもの成長に携わる実感を持つことで、その後の成長段階を含めた子育て参画意識を醸成することができるかもしれない。