2024年6月25日(火)

食の安全 常識・非常識

2023年7月14日

日本もアスパルテームをリスク管理

 食品添加物の場合は、どの食品にどのような使い方、使用量を認めるかで、摂取量(ばく露量)が変わり、リスクの大きさも変わります。

 各国は食品添加物について、IARCやJECFAなどの判断も参考にしながらADIを決定し、食文化や食品の生産状況などをもとに、その食品添加物をどの食品にどのように使ってよいかルールを決めています。1日のトータルの摂取量がADIを超えないように食品への使用基準を規定することで、食品添加物によるリスクが自国民に生じないように管理しています。

 日本は1983年にアスパルテームのADIを40mg/kg体重/日、その分解生成物であるジケトピペラジンのADIを 7.5mg/kg体重/日と決めました。

 使ってよい製品や使用量などの制限はありませんが、アスパルテームは砂糖の200倍の甘さを持つ甘味料なので、多く使うとむしろ食味が損なわれ、大量摂取にはつながらないようです。厚生労働科学研究による近年の調査では、摂取量はADIの0.3%程度にとどまっています。

長年続く批判の歴史

 さて、アスパルテームはなぜ、世界でこれほど関心を集め、IARCが検討しJECFAが再評価し、メディアが騒いでいるのでしょうか?

 もちろん、ノンシュガー甘味料は利用している人が多いから、というのが大きな理由でしょう。とくに近年は、肥満や糖尿病などの疾患を防ぐために砂糖の摂取を控えるようにという潮流がWHO、各国政府機関の間で強く、一方で「甘味」は人の味覚の五つの味の一つで重要であるため、砂糖を代替する甘味料を欲している人が大勢います。

 一方で、甘味料がむしろ、健康に悪いのではないか、という指摘も以前から強くありました。古くはサッカリンの発がん性が指摘され、2000年代に入ってからは「アスパルテームに発がん性あり」とする研究成果が発表されるようになりました。また、近年は「アスパルテームやサッカリンなどのノンシュガー甘味料が腸内細菌叢に影響する」という指摘も出てきています。

 つまりは、甘味料に対する期待と不安がないまぜになって、アスパルテームに対する関心も非常に高いのだろう、と思います。

 懸念に対しては各国のリスク評価でその都度、「エビデンスとして弱い」と判断されてきているのですが、こうした情報の常として、「危険だ」情報は拡散しやすく、「そうは言えない」という情報はあまり認識されず、市民の間で不安ばかりが残る、という構造になっています。

指摘される発がん性試験の不備

 たとえば、サッカリンの発がん性については米国で1950年代から指摘が始まりました。ラットを用いた試験で膀胱がんが生じたのです。

 しかし、多数の試験が行われた結果、ラットのオスは尿量が少ないためにサッカリンが結晶化し、それが刺激となって膀胱がんにつながる、というメカニズムが明らかになりました。ミドリザルやアカゲザルを用いた試験も行われ、ヒトではラットのオスのような現象は起こり得ないことが確認されて、IARCもサッカリンを、グループ3(ヒトに対する発がん性について分類できない)としています。

 2000年代に入ってからは、欧州ラマツィーニ財団(ERF:European Ramazzini Foundation of Oncology and Environmental Sciences)の科学者が、アスパルテームの発がん性を複数の論文で指摘し、その都度、大きく報道されました。しかし、これらの研究については、欧州食品安全機関(EFSA)や米国食品医薬品庁(FDA)が実験方法や解釈などに多数の科学的不備があると指摘し、発がん性を否定しています。

 JECFAも今回、欧州ラマツィーニ財団の行った発がん性ありを示す試験結果について、研究デザインや解釈などに限界がありリスク評価には使用できない、と判断しました。JECFAは、発がん性試験計12件について評価しましたが、欧州ラマツィーニ財団の試験以外のほかの組織・科学者が行った試験結果はすべて、「発がん性なし」だったと説明しています。


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