調査をしっかりと行い統計処理をして、さまざまな他の因子は取り除いて結果を出すのですが、この調査ではノンシュガー甘味料以外の因子を完璧に取り除けておらず残余しているのでは?というのが、論文を詳しく読み込んでの専門家の判断です。報告書の結論は、「NutriNet-Santéの論文は、参考情報として扱うべきもの」です。
JECFAも今回、この疫学研究を検討しましたが、同様にバイアスや残余交絡の可能性あり、と判断しています。
なお、この論文については、ケンブリッジ大学Senior Investigator Scientistの今村文昭博士も、疫学研究の難しさ、論文の恣意的結論を指摘しています。
WHOは甘味料使用ガイドラインを策定
こうしたハザードやリスクの評価以外に、甘味料についてはWHOが22年、報告書をまとめ、23年にはガイドラインを公表しました。「体重管理又は非感染性疾患(NCD)のリスクを減らすための手段としてノンシュガー甘味料を使用しないことを勧める」という内容です。長期的には体重管理には役に立たないとみられること、2型糖尿病や心血管疾患、成人の死亡リスクが増加するなど、望ましくない影響がある可能性を示唆しています。
ただし一方で、甘味料といってもその化学構造やヒトへの生理的影響は千差万別であろうとして、ガイドラインの根拠は不十分、ともしています。
このWHOのガイドラインについても、国立医薬品食品衛生研究所のWebページで紹介されています。
好き嫌いではなく、科学的な判断を
学術論文や報告書等は、その質を十分に吟味し、研究の進展に合わせて更新してゆく必要があります。甘味料の話は、歴史的経緯や要素の複雑さなどから、一般の人たちに理解してもらうのが容易ではなくなっているところが、残念で仕方がありません。
これから、さまざまなメディアがアスパルテームについて報道するでしょう。どうしたらよいのか、と思ったら、一次資料としてIARCとJECFAがWebページで公表している文書を、日本語のたしかな情報として、国立医薬品食品衛生研究所のWebページと、内閣府食品安全委員会のQ&Aを参照してください。
世界保健機関(WHO)・Aspartame hazard and risk assessment results released
IARC・ Aspartame hazard and risk assessment results released(JECFAと合同発表しているため、JECFAの文書もこのWebページから入手できる)
国立医薬品食品衛生研究所・「食品安全情報(化学物質)」のトピックス
内閣府食品安全委員会・アスパルテームに関するQ&A
食品安全委員会・食品添加物の海外の評価結果等に関する情報収集及び調査
米国FDA・Aspartame and Other Sweeteners in Food
厚生労働科学研究・食品添加物の試験法の検討及び摂取量に基づく安全性確保に向けた研究
食品安全委員会・サッカリンナトリウム「食品健康影響評価」
FAO releases three reviews about chemical exposure and the gut microbiome
WHO advises not to use non-sugar sweeteners for weight control in newly released guideline