2024年11月22日(金)

家庭医の日常

2023年8月25日

 「運動」と聞いて多くの日本人が思い浮かべるのが「万歩計」。これを身につけて「1日1万歩」歩くことが目標とされる。本研究では、もっと少ない歩数でも効用があることが示されたことになる。本研究は、1日2万歩まで歩いてもこの効果の傾向が持続すること示した最初の研究でもある。かなり広い範囲の患者への応用が可能な知見を示したことで価値が高い。

「生活活動」による健康維持

 ちなみに、身体活動は「運動」と「生活活動」からなる。「運動」とはランニング、水泳、サッカーなどのように、健康・体力向上・競技・ダイエットなどの目的を持って行われる活動のことである。日常生活の中で、運動以外の身体活動が「生活活動」だ。買い物・子どもの世話・掃除・通勤など多種多様である。

 これら生活活動で消費されるエネルギーを「非運動性(活動)熱産生(NEAT; Non-Exercise Activity Thermogenesis)」という。人が1日に消費するエネルギー量のうち、20〜40%を運動とNEATによる熱産生が占めていると言われている。

 これでわかるように、運動でエネルギーを消費することに加えて、NEATを高めることも健康維持・増進には有益である。

 具体的かつ簡単な方法は、座っている時間や寝そべっている時間を減らし、立っている時間と歩いている時間を増やすことだ。

 なお、「ニート」と呼ばれる若者がいるが、これは、就学も就職もせず職業訓練も受けていないという意味の英語 “Not in Education, Employment, or Training” を略した「NEET」から来ており、「ニート」違いである。

過度な筋トレより身体は緩めたい

 S.B.さんは、店先で働く機会が急激に少なくなったために、NEATが極端に減少してしまったのだと思われる。ネットを利用するため店先で扱う品物が減少し、以前に比べて彼が自宅で食べる野菜・果物の量も減少したという。

 当面は、できる範囲でNEATを高めつつ、暑さが和らいできたらランニングを再開しようということになった。

 「壁スクワット」と「プランク」については、私が実践している「ゆる体操」を取り入れた「スクワット」と「ゆる筋トレ」を紹介しながら徐々に準備できるかもしれない。「ゆる体操」についてはまた後日詳しく書きたいと思う。

 私事で恐縮だが、NHKの『ラジオ深夜便』の『からだの知恵袋』に今月4回出演している(火曜日深夜、日付が変わって水曜日の午前0時すぎから20分程度。放送日から1週間は「聴き逃しサービス」で好きな時間に視聴可能)。

 今回のシリーズのテーマは「むくみ解消!ゆる体操」で、22年6月の『診療時間外に子どもが頭を打ったらまず何をする?』で書いたように、昨年NHK『きょうの健康』に出演して紹介した「ゆる体操」が割と評判が良かったため今度はラジオで、ということかもしれない。ディレクターのMさんがスタジオで熱心にゆる体操をしてくれて、楽しく番組収録ができた。

 NEATが若干高まる構成なので、ながら時間でもお聴きいただければ幸いである。

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