バイデン米大統領の訪越に関し、2023年9月7日付の英Economist誌は、米越関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされ、防衛、経済安全保障等で成果はあろうが、ベトナムは米中のどちらかを選択することなく引き続き両国間のバランスを取るだろうと解説している。
バイデンは、インドでの主要20カ国・地域(G20)会議出席後の9月10日、ベトナムを公式訪問した。
この10年間、米越関係は「包括的パートナーシップ」として位置付けられてきたが、今般バイデンとグエン・フー・チョン・ベトナム共産党書記との会談の結果、両国関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。
米国の運動家らは、バイデンがおぞましい人権実績の政権に媚びようとしていると非難する。しかしバイデンは、インド太平洋地域における中国の影響力に対抗すると決めている。
ベトナムの安全保障上の最大の懸念は、中国による南シナ海への侵入、漁船や石油・ガス探査船への嫌がらせである。米国は2016年にベトナムへの武器売却禁止措置を解除した。
米国にとって、中国を念頭に置いた経済安全保障も目標の一つである。それは、貿易とサプライ・チェーンを再構築することで、優秀で若い労働力を擁し、生産拠点として成長しているベトナムは重要である。
ベトナムにとっては、「関係の格上げ」に多くのことがかかっている。世界のサプライ・チェーンの要となっているベトナムにとって、米国は最大の輸出市場である。
米国の技術もベトナムにとって重要である。 防衛分野における米国との関与強化は、南シナ海における支援だけでなく、ロシア兵器に代わる選択肢を求めるベトナムにとって魅力的である。
中国は、バイデンがベトナムとの関係を深めようとしていることを非難している。しかし、ベトナムは、中国は抗議するだけだと予測している。
米国の一部の人たちは、ベトナムが自国陣営によってくる可能性があると考えている。 それは希望的観測である。ベトナムは、これまで米国の側に立ったことは一度もなかった。 おそらく、米中との間で巧みにバランスを取ろうとするだろう。
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外交関係の格上げはあるものの、ベトナムは、当面の間は米中間のバランスを取る形で関係を維持しようとの上記エコノミスト誌の結論は、妥当な見解であろう。
米越関係を語る前に、中越関係を少し考えてみたい。ベトナムにとって中国は2000年の歴史を通じての「脅威」である。対中警戒感は政治指導者から市民まで広く共有されている。