2024年4月18日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2013年9月20日

 2011年7月下旬に水産庁は韓国政府に対し、「韓国は、20kg未満は漁獲を禁止していると言っているが、その数量が増え続けている。未成魚の資源管理ができなければ、今後輸入規制も検討する」という方針を示しました。2012年 7/18時点での韓国からの輸入は1,339トンとなり、前年2011年同時期の458トン、2010年の1,049トンを大きく上回っていました。2012年のサイズ組成は、20kg未満は漁獲されていないはずなのに、実際に日本で行われた水揚げの内容は2kg~10kgが1,070トンと全体の8割を占め、30kg以下全体で97%を占めていました。マグロの最大の市場である日本が輸入をしなければ、輸出国も真剣に資源管理について考えるはずです。今後も、日本は資源管理が不十分な魚の輸入は制限するという対応が望まれます。

崖っぷちの太平洋クロマグロ 日本の対応次第

 『漁業という日本の問題』(勝川俊雄著)によると、2010年5月に全国水産物卸組合連合会など5団体が、大型巻き網船によるマグロ乱獲行為の防止などを求めた署名を集めて、山田正彦農林水産大臣(当時)に陳情したそうです。水産資源保護を目的に全国の仲卸業者が国に陳情するのは、国内では初めてということでした。クロマグロの未成魚と産卵魚の乱獲防止に賛同する出荷業者、卸、流通関係から集めた署名は4万人にも上ったそうです。

 これとは別に、同5月に水産庁から「太平洋マグロの管理強化についての対応について」という強化案が作成され、個別割当の導入や産卵場の禁漁区などが盛り込まれていました。2011年3月14日に「太平洋クロマグロの資源管理に関する全国会議」が予定され、そこでクロマグロの漁獲枠についての議論も行われるはずだったそうですが、東日本大震災とそれに続く原発災害で、会議は宙に浮いてしまいました。

 築地でマグロを扱っている方々に話を聞くと、小型や脂がのっていない時期に巻き網で漁獲されるマグロを見ていると、「乱獲」という諦めにも似たコメントが出てきます。4万人の署名からもわかる通り、マグロに関する一般的な知識を持っている関係者は問題点を認識しているのです。また、漁業者にしても、規制が個別割り当てではなく、実質獲り放題であれば、卵を持っていようが、小型の未成魚だろうが見つけたら獲る以外にありません。自主的な管理などは、到底無理な話です。国がきちんと科学的な管理に基づいて個別割当制度にしていく以外にないのです。

 WCPFCは、TACの数量が設定されておらず、規制逃れを避けるための漁獲証明書もなく、他の海域より甘いと指摘されています。大西洋マグロ類保存委員会(ICCAT)のように資源管理をしっかり行って資源を回復させることができるのか? 2012年のゼロ歳魚は異常な低漁獲で、近年生まれたマグロの加入が非常に低下していることが、WCPFCの科学委員会(ISC)により示唆されています。崖っぷちの太平洋クロマグロ、その運命は、日本のこれからの進め方次第と言えます。


NPO法人 魚食文化の会の生田よしかつ理事長は、J-WAVEのラジオで今回のメジマグロの問題と日本の資産資源管理について以下のコメントを出しています。
1回目
http://www.youtube.com/watch?v=97bp090u9BA&list=UUAIgcniECFf_V_Urc19-nug
2回目
http://www.youtube.com/watch?v=lCGQB_JlRN8&list=UUAIgcniECFf_V_Urc19-nug
3回目
http://www.youtube.com/watch?v=6qR0GjF1b7I&list=UUAIgcniECFf_V_Urc19-nug
最終回
http://www.youtube.com/watch?v=AjtwlO53DpI&list=UUAIgcniECFf_V_Urc19-nug








 






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