2024年11月23日(土)

食の「危険」情報の真実

2023年10月13日

 記事ではまた、フリーライターが日本の食品の検査体制を批判。輸入食品を無作為に選んで検査する「モニタリング検査」の検査率が8%程度で、90%以上の輸入食品が無検査で入ってくることを問題視している。

 検査率8%は少ないと思うかもしれないが、食品の安全は最終製品の検査ではなく、原料から最終製品まで、フードチェーンのすべての段階において安全策を講じる食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」方式により確保されている。最終製品の検査で違反が非常に少ないのはこのためで、これ以上最終検査を増やす必要はないというのが多くの専門家の考えだ。

 そして、食品中の残留農薬や細菌数を調べるモニタリング検査のためには検体を切り刻む必要があり、検査をした食品は食べられなくなる。つまり、100%検査したら、市場に流通させる食品はゼロになってしまう。

 このライターがこれまでの著書で環太平洋経済連携協定(TPP)や輸入食品を批判してきたことを考えれば、「食品は輸入せず、国産でまかなうべき」といいたいのかもしれないが、カロリーベースの食料自給率38%の日本の現状を考えれば、現時点で中国から食品を輸入しないという選択は現実的ではない。

 ちなみに農林水産物輸出入概況(2022年)によると、輸入される冷凍野菜の47%、鶏肉調製品(から揚げやチキンナゲットなど)の35%が中国産だ。これらの食品は、コンビニやスーパーのお総菜、飲食店などで使われ、私たちの食生活を支えている。

「外国産=危険」ではない

 輸入食品の安全性をめぐっては、中国だけでなく、米国の農水産物もターゲットになることが多い。本の宣伝になるので取り上げたくないが、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏が今夏出版した『マンガでわかる日本の食の危機』によると、米国が日本の食の安全基準を後退させて、「アメリカ人がキケンで食べたがらない」食品を日本に輸出しているのだそうだ。

 どんな食品かというと、危険な除草剤が残留した小麦▷防カビ剤が残留したレモン▷欧州連合(EU)では発がんの危険性などが疑われて輸入を禁止しているホルモン剤が残留した牛肉▷安全性が不明な遺伝子組み換え(GM)の大豆やトウモロコシ――などだ。

 しかし、除草剤や防カビ剤、ホルモン剤は、それぞれに残留基準値が設定されており、基準値以下でないと輸入してはいけないことになっている。残留していることが危険なのでなく、残留基準値を超えた場合に健康影響があるかもしれないということだ。

 基準値違反はゼロではないが、先ほど示したように米国から輸入される食品の違反率は0.81%。中国の0.23%よりは高いものの、輸入され流通しているのは基準値以下の食品だ。これらが残留した食品を食べたとしても健康に影響を与えるものではない。

 ただ、除草剤や防カビ剤など農薬の残留については「たとえ基準値以下でも、その食品を食べ続ければ農薬が体内に蓄積し健康を害するのでは」と心配する人もいる。同様の懸念は食品添加物でもよく聞かれるが、体に蓄積するものは食品添加物や農薬として使えないので心配は無用だ。


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