また、日本はGM作物を栽培していないが、毎年多くのGM大豆やGMトウモロコシを輸入している。輸入は1996年以来なのでもう30年近い。これらは食用油やコーンスターチ、家畜の飼料として使われている。
バイテク情報普及会によると、日本人が1年間に消費するGM作物の量は、コメの消費量(約800万トン)の2倍以上に相当するという。鈴木氏はGM作物を「安全性が不明」というが、30年近くGM作物の恩恵にあずかり、日常的に食べてきた日本人は世界有数の長寿国だ。
GM作物が市場に出始めたころならまだしも、30年近く食べてきてとくに問題が起きていないのに、なぜいまだに「安全性が不明」と言い続けるのか理解に苦しむ。
必要なのは輸出販路の拡大
中国の輸入停止を受け、最も影響を受けたのが北海道のホタテ生産者だろう。宮下一郎農林水産相が9月、「ホタテを1人5粒食べて」と呼びかけたが、1人当たり年間5~7粒のホタテを食べれば、行き場を失った輸出分の多くを消化できるそうだ。消費者にできるのはホタテを食べるぐらいだが、国や生産者には中国への輸出に過度に依存しない体制づくりをお願いしたい。
ホタテは水産物の輸出額ナンバーワンで、日本政府が進めてきた農林水産物の輸出拡大に大きく貢献してきた。函館税関の資料によると、ホタテの中国への輸出が増え始めたのは11年ごろからで、輸出品の大半は冷凍殻付きホタテだ。この殻付きホタテを中国では加工原料として利用し、片方の貝をはずした片貝に春雨をのせてニンニク醤油で蒸す料理は中国では定番料理という。
また、中国で殻剝き加工を行った後、米国などへ再輸出されるものも多く、産経新聞(9月16日付)によると、米国が昨年、中国経由で輸入した日本産ホタテは1億ドル(147億円)超にのぼる。ホタテを中国で加工して輸出するのでなく、日本で加工して輸出すれば、中国の輸入停止の影響を小さくできるはずだ。
それにはホタテ加工のための施設整備が欠かせない。また、米国だけでなく、EUに輸出するための施設整備も必要だ。処理水放出による風評被害対策として国が積み上げた800億円の基金が、こうした施設整備の費用にも活用されることを期待したい。