内閣府の告示により、2023年10月1日より、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)に法規制が及ぶようになった。
近年のインターネット広告市場は、既に新聞、雑誌、ラジオ、テレビのいわゆるマスメディア4媒体の広告市場規模を上回っているとされる。とりわけSNS上で展開される広告市場の拡大が顕著だ。そして、ネット広告市場が拡大するにつれて、ステマの問題が取り沙汰されてきた。
ステマとは、一般的には「消費者に宣伝と気づかれないようにされる宣伝行為」を指す。このような手法は古くからあり、商売人が仕込み客を金で雇い、他の客の前で商品を高値で買わせたりするような例もステマの一種といえる。
昨今のステマは、ネット上の宣伝行為を指して言うことが大半だ。一例として、インフルエンサーなどと呼ばれる情報拡散力を持ったネットユーザーがSNSや配信動画等で企業から依頼されたことを隠して商品を紹介するケースや、企業が自社に有利な口コミを投稿すること条件に格安・無償でユーザーへ自社の商品を提供したりするようなケースなどが見られる。
このステマは、宣伝であることを隠すことで商品やサービスがあたかも中立的な立場から評価されているように見せかけるもので、消費者の合理的な判断や企業間の公正な競争を阻害するとして、以前から問題視されてきた。
2017年には日本弁護士連合会が「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を公表し、事業者が無関係な第三者を装って行う広告宣伝や、第三者に金銭等の利益が提供されているのにそれを隠しているケースを、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)によって規制することを提言している。
これに対してこれまでの間、ステマそれ自体を直接規制する法律は存在せず、主に事業者団体の自主規制などに委ねられていた。
ステマを指示した事業者に対する規制
今回、内閣府の告示により「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが 困難であると認められるもの」が、景品表示法によって禁止される「不当な表示」の対象に指定された。これにより、23年10月1日以降、事業者によるステマ行為が法律で幅広く規制されることになった。