2024年5月20日(月)

ビジネスと法律と経済成長と

2023年10月17日

 ステマ規制に違反した事業者に対しては、消費者庁や都道府県から違反行為の差し止めや、再発防止するための措置を講じるよう措置命令が下される。その際、違反の内容とともに事業者名が公表されることが想定される。

 なお、ステマ規制の対象となるのは商品やサービスを提供する事業者、すなわち広告主の側に限られている。現時点では広告代理店や、SNSおよび動画配信等で活動するインフルエンサーやアフィリエイターといった事業者から依頼されて広告する側は直接的な規制の対象とはされていない。

 何をもってステマ行為と判断するかについては、消費者庁が詳細な運用基準を公表している。

 規制の対象となるのは、事業者やその従業員等があたかも第三者であるかのようにして自らの商品やサービスを広告・宣伝する場合のほか、第三者が広告主となる事業者の関与が分からないやり方で事業者の商品等を広告・宣伝する場合が含まれる。

 特に注意が必要なのは後者のほうだろう。運用基準には、事業者が第三者のSNSや口コミサイトで広告・宣伝させる場合、ECサイトでの購入者に依頼してレビューを投稿させる場合、アフィリエイターに委託して自らの商品やサービスを広告・宣伝させる場合のほか、事業者が口コミサイトなどに他の事業者の商品やサービスの低評価を投稿させる場合が挙げられている。

 また、事業者から第三者に対して明確な依頼や指示がない場合であっても、第三者が表示内容の決定に関与したと判断される場合には、ステマ規制に抵触する可能性がある。例として、事業者が第三者に無償で商品等の提供を行った上で第三者がSNS上等で紹介する場合や、商品等を紹介することでその事業者との取引が有利になることを示唆したりする場合などが挙げられる。

 その一方で、事業者の関与があったとしても、第三者が自主的な意思によりSNS等で特定の商品やサービスを紹介したと判断される場合にはステマ規制の対象にはならない。

 また、第三者が事業者の関与の下でSNSに投稿したりアフィリエイトサイトで広告・宣伝したりする場合であっても、「広告」「PR」と表示するなど、広告であることが明らかになっている場合にもステマ規制は及ばない。

「自主的な意思による投稿」との境界線は

 今回の内閣府の告示により、今まで明確な法規制が及ばなかったステマ行為に、ようやく景品表示法の規制が及ぶことになった。もっとも、未だ課題は残されている。消費者庁による運用基準をもってしてもグレーゾーンは払拭されていない。

 運用基準によると、事業者が第三者に広告・宣伝をさせる場合、明確な依頼や指示がなくとも、第三者が表示内容の決定に関与したと判断される状況があれば、規制対象になるとされている。他方で、事業者の関与があっても、自主的な意思によるものと判断される場合には規制の対象にはならない。

 自主的な意思による投稿かどうかの境界線は往々にしてあいまいだ。例えば事業者がインフルエンサーに自社製品を配布して「自由に感想を投稿してください」と依頼するような場合、感想の内容が実際に投稿者の自由に委ねられている限りステマ規制に抵触しない可能性が高い。

 しかしながら、企業が同様の行為を二度三度と繰り返して、企業に忖度した投稿をしてくれる者を狙って商品を配布するような場合などは、実質的に第三者の表示内容の決定に関与したとみなされ、ステマ規制に抵触する場合もあると思われる。その境界線がどこにあるのかは現時点では明確とは言い難い。

 このように、グレーゾーンが解消されないことで規制の適用が抑制されてしまうようであれば、規制自体が絵に描いた餅にもなりかねない。


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