2024年10月11日(金)

家庭医の日常

2023年10月29日

 『診療の手引き』の22ページを参考に、重症度を下記のように分類している。

軽症は、SpO2≧96%、呼吸器症状なし、または咳のみで呼吸困難なし
中等症Ⅰ(呼吸不全なし)は、93%<SpO2<96%、呼吸困難や肺炎の所見あり
中等症Ⅱ(呼吸不全あり)は、SpO2≦93%、酸素投与が必要
*呼吸不全の定義は、動脈血酸素分圧(PaO2)≦60mmHgであり、これはSpO2≦90%に相当するが、SpO2は3%の誤差が予測されるので、SpO2≦93%が基準とされている。

 重症化リスクの低い軽症患者では、経過観察のみで自然に軽快することが多い。重症化リスクの高い患者では、診断時は軽症と判断されても、発症後数日から2週目までに病状が進行することがあり注意して経過観察する必要がある。重症化リスクの高い患者に対して、早期に抗ウイルス薬を投与することで、入院や死亡を減らすことが期待される。

 発症から5日間、かつ症状軽快から1日以上経過するまで、人との接触は出来るだけ避けてもらう。同居家族がいる場合には生活空間を分け、マスク着用と手洗いを励行する。

 急性期の症状が遷延したり再燃する場合には、また受診してもらう。発症から3カ月を経過しても何らかの症状が2カ月以上持続しており、他に明らかな原因がない場合には「罹患後症状」を疑う。

長期的に悩ませる後遺症

「コロナの後遺症って、かかる人が多いんでしょうか」

「複数の研究結果から、COVID-19患者の10〜20%で後遺症が続くと言われています。コロナ禍の最初の2年間(2020年〜21年)で、WHOのヨーロッパ地域だけで1700万人以上の人たちが経験したと言われています」

「え、そんなにですか!どんな症状が出るんですか」

『診療の手引き』の15ページの図2-4に代表的な罹患後症状が挙げられています。疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下がありますね。でも、症状についてはもっとバラエティがあって、今まで200以上もの異なった症状が報告されているんですよ」

 COVID-19の後遺症は、「Long COVID」「post COVID-19 condition」「Post-COVID-19 Conditions (PCC)」「Post-Acute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection (PASC)」など、さまざまな名称で呼ばれているが、定義の曖昧なものも多い。

 WHOでは「post COVID-19 condition」と呼んでおり、比較的明確な定義をしている。それによると、「post COVID-19 condition」は、COVID-19に罹患後少なくとも3カ月後に診断され、他の疾患による症状として説明がつかない症状が少なくとも2カ月続く状態である。

 COVID-19の症状から持続することもあれば、回復後に出現することもある。時間の経過とともに症状が変化することもある。

 ちなみに、『診療の手引き』では、WHOの「post COVID-19 condition」を「COVID-19後の症状」と訳した上で「罹患後症状」と表記しているとのことだ。

 WHOホームページのQ&Aセクションには「post COVID-19 condition」についての詳しい記述がある。

抗ウイルス薬

「コロナにかかったら、みんな入院しなければならないんですか」

「さっき話した重症化リスクと重症度によって、診療所で安全にケアしていけることもあります」

 発熱、咳、疼痛などを緩和する対症療法に加えて診療所での治療の柱となるのは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を抑える抗ウイルス薬である。抗ウイルス薬は、SARS-CoV-2検査陽性で、COVID-19の症状のある、重症化リスクが高い患者への使用が基本になる。


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