<本日の患者>
C.U.さん、50歳、女性、おにぎり店勤務。
「先生、新型コロナについていろいろ質問があります」
「そうですか。どうぞ尋ねて下さい」
C.U.さんが私の働く診療所を最初に受診したのは、次女のS.U.ちゃんを出産した直後で、貧血やうつなどがあった時だ。それ以来、本人と家族のさまざまな健康問題で受診している。
目下の問題は、更年期に関連する諸症状である。そのS.U.ちゃんも今年成人式だったというから、家庭医としてかれこれ18年間の付き合いになる(私は、成人と言うとまだ20歳がしっくりする世代だ)。
新型コロナについての疑問と懸念
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)のパンデミックについて、世界保健機関(WHO)がその最上位の警告として2020年1月30日に宣言していた「PHEIC(public health emergency of international concern; 国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)」は、23年5月4日をもって解除された。
日本でも、23年5月8日に感染症法の分類が、危険度の高い2類以上に相当する「新型インフルエンザ等感染症」から、季節性インフルエンザなどと同じ5類感染症へ移行し、感染対策は個人の自主的判断が基本となり、国からの一律の要請は無くなった。医療費の原則自己負担分も発生している。
しかし、COVID-19は引き続きリスクの高い健康問題であり、最近でも身近な人たちの感染はよく聞く。長期的な対応が必要である。
家庭医として、COVID-19に関連する疑問や懸念を患者から相談されることは多い。いつもと若干スタイルが異なるが、今回はそうした疑問を一緒に考えて行きたい。
なお、COVID-19については未知の部分が依然多く、今後の臨床研究のエビデンスや政府はじめ公的機関の取り決めなどにより状況は変化していく。ここに記載したことがやがて正しくなくなってしまう可能性もある。特に薬剤や検査については、実際にそれらが必要な時に、担当する医療者にその時点で利用できる最新最良の情報を共有して相談してほしい。
情報はどこから得られるか
「まず、コロナってまだ流行ってるんですか」
「正確な数は分かりません。症状が出ても医療機関を受診しない人が多くなったので、実際の感染数よりも報告数はかなり少なくなってると思います」
日本では、特に感染症法の分類が5類に移行してから、COVID-19についての最新の情報を得ることが難しくなった。そうした中で、例外的な努力を続けているのが、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き』である。現在の最新版は、2023年8月21日発行の第10.0版で、23年7月までの情報を基に作成されている。