14の太平洋島嶼国の内、台湾を承認している国はパラオ、マーシャル、ナウル、ツバルの4カ国である。2019年にキリバスとソロモンが、台湾との関係を絶ち、中国と国交を樹立した。
中国による島嶼国への影響力拡大と台湾孤立化への動きは、10数年の歴史を持つ。06年に温家宝首相が、島嶼国首脳や企業を集めてフィジーで会合を主催し、経済協力構想を打ち上げた。
18年から22年の間には島嶼国10カ国と一帯一路の覚書を締結した。現在、多くの国では、中国の援助を受けて、政府庁舎、国際会議場、埠頭、スポーツ施設等が建設され、経済分野での中国の影響力拡大は着実だ。
その一方で、中国が安全保障分野において具体的動きを表面化させたのは、22年4月のソロモン諸島との安全保障協定締結以降である。協定は非公開であったが、文書が流出し、その中には、中国軍や警察の派遣、中国船の寄港などが盛り込まれていた。
これを機に、他の島嶼国に加え、日本、米国、豪州、NZ等の対中警戒感は一気に高まった。22年5月、王毅外相はフィジーで島嶼国10カ国との外相会合を開催し、貿易と安全保障に関する合意文書を作ろうとしたが、反対の声があがり、合意に至らなかった。
日本にとっても重要な地域
南太平洋は「自由で開かれたインド太平洋」の要所であり、特に日本と豪州・NZ、米国と豪州・NZを結ぶ重要な「シーレーン」である。日本は、石炭および天然ガスの20%、牛肉や酪農製品、大麦などの約7%などを豪州から輸入している。
この地域の平和と安定、「航行の自由」確保は、日本の安定と経済発展にとって不可欠である。また、万が一、台湾や南シナ海で有事が発生すれば、この海域の重要性は一段と増大する。
パラオ、ミクロネシア、マーシャルの3カ国は、1920年から45年の間、日本が国際連盟から委託を受けて統治していた。数万人の日本人が移住し、人材育成(教育)、産業振興(漁業、農業)等に貢献した。
3カ国とも独立後の初代大統領は日系人であり、現在も多くの日系人が各国の発展を支えている。3カ国とも親日であり、日本にとって大きな財産である。
日本は島嶼国との間で、1997年以降、「太平洋・島サミット」を開催し、来年で第10回を迎える。20数年間の協力は各国との「信頼関係」を構築する基礎となっている。