2023年10月17日付のワシントン・ポスト紙の社説は、米政権は民主党、共和党にかかわらず、長年、南太平洋島嶼国に無関心だったが、昨年中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結する等の動きを受け、やっと、この地域への関与を強めている、中国との競争では、アフリカ、南米を含め、いかなる国や地域も無視すべきでない、と主張している。
米国は月曜日、マーシャル諸島と軍事協定を締結した。バイデン政権は先月、クック諸島とニウエを主権独立国家と認め外交関係樹立を約束した。
米国は1月にソロモン諸島に、5月にトンガに大使館を開設した。来年バヌアツに米国大使館が設置される。
人口のまばらな14の島嶼国は突如として外交上の注目を集めているが、この背後には中国の存在がある。中国は、この地域への関与を強化し、 昨年、中国がソロモンと安全保障協定を締結した際、米国、豪州、ニュージーランド(NZ)は、中国が軍事基地化を進めるのではないかと懸念した。
米国は、当該地域の戦略的重要性に対して儀礼的同意を示してきたものの、ここ数十年間、関心を示してこなかった。
昨年、ブリンケン国務長官がフィジーを訪問したが、高官の同国訪問は36年ぶりだった。その3カ月後、中国の王毅外相は、フィジー、ソロモン諸島、キリバス等の太平洋島嶼8カ国を歴訪した。習近平主席は、2014年と18年の2回、この地域を訪問した。
中国は、一帯一路構想を含め、太平洋島嶼国へ27億ドル以上の投資をし、新型コロナの際はワクチンや医療品の支援も行った。しかし、ソロモン諸島を除けば、太平洋諸国は中国との地域安全保障協定に署名することは拒否した。実際、彼らはワシントンの関与を望んでいる。
彼らの最大の関心は、地球規模の気候変動に対処することで、低地の島々ではすでに海面上昇が起きている。太平洋諸国へのバイデン政権のインフラ構築と気候変動対策への支援という優先順位は正しい。
より広範な教訓は、中国とのグローバル競争において、いかなる国や地域も無視できないということである。これはアフリカ、南米、その他の無視されている世界各地に対しても当てはまる教訓だ。
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このタイミングでこの社説が掲載されたのは、世界の関心がイスラエル・パレスチナ、ウクライナに集中せざるを得ない中、南太平洋における中国の動きに引き続き対応が必要という「警鐘」の意味もあると思われる。米国の関与は、島嶼国のみならず、日本、豪州、NZ、台湾等、地域全体の安定にとって不可欠である。