2024年5月12日(日)

プーチンのロシア

2023年11月14日

 結局、欧米日の市場をほぼ失ったにもかかわらず、ロシアは引き続き四半期当たり5000万トン以上の原油を輸出できているわけである。もっとも、数量はさばけても、高い利益を約束された先進国市場を手放したことは、ロシアの石油産業にとってボディーブローのように効いていると考えられる。

半導体の輸入にはあまり変化なし

 一方、ロシアの輸入の面では、半導体に着目してみよう。22年2月のウクライナ侵攻開始後、先進国はロシアへの半導体輸出を禁止した。その結果、ロシアは半導体不足に陥り、軍需生産にも支障を来たしていると指摘された。

 困ったロシアは、輸入した家電から半導体をむしり取って使っているという憶測まで語られた。実際には、どうだったのだろうか?

 国際的な商品分類であるHSコードで、半導体に該当するのは、8541「半導体デバイス及び圧電結晶素子」である。本来ならばもう少し詳しく分析したいが、ロシアの貿易統計集ではこれより細かい分類は出ていないので、HSコード8541の輸入状況を見ることにする。なお、8541はロシア貿易統計集の四半期報には出ておらず、年報だけとなる。

 正直言うと筆者は、いくらロシア税関が密かに紙の貿易統計集を発行し続けていると言っても、半導体のような機微な品目の輸入データは、掲載されなくなっているのではないかと予想した。しかし、22年の年報を紐解いてみると、8541半導体の輸入データが何のてらいもなく出ていたので、拍子抜けしたのである。

 その8541半導体の輸入動向をまとめたのが、表2となる。全体として、22年にも、輸入状況はそれほど劇的に変わっていないことに気付く。22年に、非友好国からの輸入は確かに減ってはいるが、むしろ意外と残っているなという印象だ。

 2月24日の侵攻前に駆け込み的に輸入されたと考えるには、多すぎる。やはり、先進国メーカーの半導体を、何らかのルートで、ロシアが調達し続けていると考えざるをえない。

 問題の中国は、侵攻前も、侵攻後も、ロシア向けの半導体供給国として半分強を占めている。しかし、中国のシェアは、19年が60.4%、20年が56.5%、21年が56.3%、そして22年が56.1%と、むしろ低下傾向を辿っている。少なくとも、ロシアの貿易統計からは、「先進国から売ってもらえなくなった半導体を、中国が代わりに供給している」という明確な構図は確認できない。


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