2024年5月11日(土)

プーチンのロシア

2023年11月14日

目覚ましい中国との貿易拡大

 筆者はもう20年ほど、ロシアの主な貿易相手国の順位、ロシアの輸出入総額に占める各国のシェアをトレースし、表にまとめる作業を続けてきた。ロシアが貿易統計を発表しなくなり、当初は「私のこのライフワークも途切れてしまうのか」と、しょんぼりしていたのだが、ロシア貿易統計集の22年版を入手したことで、表3のとおり無事更新できた。

 このランキングでは、10年に中国が初めてトップに立ち、その後、不動の首位に君臨している。10年ほど前には10%程度だったそのシェアも、年々拡大し、最新の22年には21.83%に達した。

 ちなみに、この間、対照的に順位とシェアを低下させていたのが、日本である。安倍晋三政権の対ロシア経済協力路線は、まったくの空振りだったことになる。もっとも、経済協力が実を結んでいたら、侵攻後の対露制裁がもっと大変だったはずなので、怪我の功名か。

 ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は19年、24年までに露中貿易を往復で2000億ドルの大台に乗せることで合意した。この目標は、本年23年中に前倒しで達成されることが確実となっている。

 中国側の貿易統計によれば、23年1~10月の時点ですでに往復1964億ドルに上っているので、大台達成は目前である。前出のダヴィドフ長官代行は10月末に、露中貿易は23年通年では2200億ドルに達するだろうと発言した。

 これは果たして慶事だろうか? 筆者の試算によれば、このままのトレンドが続くと、23年にロシアの輸出入総額は、7150億ドル程度になりそうである。露中貿易が2200億ドルだとすると、中国のシェアは一気に30%程度まで高まることになる。もはや異常な依存度と言わざるをえない。

 今回見た半導体の例からもうかがえるとおり、中国側が意図的にロシアに救いの手を差し伸べている様子はない。にもかかわらず、まるで水が低きに流れるように、ロシアは中国への依存を深めている。貿易データからは、中国のジュニアパートナー化まっしぐらとしか言いようのないロシアの姿が浮かび上がる。

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