2024年5月12日(日)

プーチンのロシア

2023年11月14日

 なお、細かい話になるが、ロシア税関の発行する貿易統計集には、年報と四半期報とがある。われわれのセンターに入荷済みなのは、22年の年報と、23年の第1四半期報までである(以前と比べると、発行時期が遅くなっている印象がある)。基本的に両者の内容は共通だが、個別品目の輸出入データで、年報にしか載っていないものと、四半期報にしか載っていないものとがあるので、注意が必要だ。

石油輸出データも明らかに

 まず、ロシア経済の屋台骨を支える石油輸出。これに関しては、ロシアが一般向けにはデータを発表しなくなったため、外国のマスコミや国際機関がタンカーの動きを追跡したり、輸入国側の統計をミラーデータとして利用したりしながら、必死に推計してきた。その答え合わせができる時が、ようやく来た。

 原油の輸出動向に関しては、ロシア貿易統計集の四半期報に掲載されているので、それにもとづいて表1を作成した。なお、従来は輸出相手国の数字をすべて合計すると、だいたい全世界の合計額になっていたが、22年第4四半期になって、急に誤差・脱漏が大きくなった。もしかしたら、北朝鮮など、禁断の相手に輸出しているのかもしれない(北朝鮮への石油製品の輸出についてはすでに話題に上っている)。

 表1から、全体像は明らかである。欧米日韓など、ロシアにとっての「非友好国」への輸出が激減し、旧ソ連諸国で構成する独立国家共同体(CIS)諸国や新興国といった「友好国」がそれに取って代わる構図である。この構図自体は周知のものだったが、ロシアの貿易統計でそれを正式に確認でき、スッキリした。

 非友好国に関して言えば、まず米国は、石油調達に関し選択肢の多い国であり、22年2月の侵攻開始直後に、対ロシア・エネルギー輸入全面禁止に踏み切った。欧州連合(EU)は対ロシア原油依存度が大きかっただけに苦しんだが、22年12月5日にタンカーによる海上輸入を禁止した(パイプラインによる輸入は継続可)。日本は、22年にサハリン1の操業が一時ストップしたことをきっかけに、なし崩し的にロシアからの石油輸入を取り止めることになった(サハリン2からの少量の入荷はある模様)。

 友好国に目を転じると、従来大きかったベラルーシへの輸出が22年に激減したのは、同国との関係が悪化したからではなく、ベラルーシ自身が国際的な制裁で石油精製業が麻痺する事態に陥ったため、ロシアから原油を輸入する必要性が低下したからだった。

 そうした中、ロシアの石油輸出を支えたのが、中国およびインドという2大新興国の市場であった。従来、ロシアからそれほど多く輸入していなかったインドが、割安となったロシア産ウラル原油の爆買いを始め、ロシアの主要原油輸出相手国に躍り出た。

 そして、以前からロシア最大の原油輸出相手国であった中国も、積極的にロシア原油を買い増していった。23年第1四半期の最新データによれば、ロシアの原油輸出の実に73.3%が中印向けであり、特に中国のシェアは39.7%に及んでいる。


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